浮き世離れの今日【名探偵コナン×鬼滅の刃】

参拾陸 ページ36

「私たちに出来ることは少ないかもしれない。だけど、なにもしないのは嫌なの…」

絞り出すような声。…周囲の人も共感するような趣だった。

『……頑固ですね』
「それは貴女もでしょ！」
『…………』
「…………」
『…はぁ…分かりましたよ』

Aさんは呆れたように…疲れたように息を吐く。

『ですが、鬼を狩るのは我々です。…だから貴方方は民間を護ってください。その際には必ず藤の花を身につけて下さい』
「！っそれじゃあなにも変わらな」
『変わります。少なくとも私の中では。………周りのものに気を割かない分、楽になる』

そう言うとAさんは立ち上がる。そして部屋の出口へと向かった。カラスも続くように飛んで、彼女の肩に座る。

「ちょっとどこ行くのよ！まだ話は終わってないわよ！」
『お互いやることは決まったでしょう。話のいざこざもまとまりました。もうここにいる必要はありません』
「まとまったって…あのねぇ」

あれはまとまった、というより無理やり落ち着けた、に近い。…結果的にオレたちが鬼狩りに関われないのは変わっていない。

「というか、お互いやることは決まったって……貴女はこれから何をするの」

佐藤刑事が尋ねるとAさんの足が止まって、振り替える。

『私がやることは何も変わっていない。…私は鬼を狩るものだから』

今度こそAさんは部屋を出ていく。…それを止める声はない。

＿私は鬼を狩るものだから。

そう言ったAさんは遠くを見ていて、どこか悲しげに見えた。

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