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参拾弐 ページ32

「……ねぇ、Aさん」
『なに?』

どうしたものか、と悩んでいると少年に呼ばれる。

「ボクたちができることって何かないかな」

そう聞かれて私の皺は更に深くなる。……何かしたい、という思いは伝わってくる。だが、こればかりは私一人でやるしかない。

『……私はこの辺の地理をしらないので、それを教えて頂けたらと』
「それは勿論だよ!でも、そうじゃなくて」
「"警察"として何か出来ることはないですか?」

少年の言葉に被さるようにお兄さんが言う。

『警察として…というのは…』
「民間人に被害が出てしまった以上、私たちも動く。…だけど私たちは鬼がどんなものか知らない。だから貴女の意見を聞きたいの」

…つまり、なんだ。

『……あなた方も鬼を斬りたいと』
「斬る…というか、捕らえる、の方ね。…元は人なんでしょう?勝手に殺すことは出来ないわ」

なに言ってるんだ、と返そうとして口を閉じる。……この女性は冗談を言ってる訳ではない。影は正義を写していた。

…彼女は何も知らないのだから仕方ない。けれど、その考えは私から見れば…甘い。

『鬼は人を殺します。知性や理性なんて、あってないようなものです。奴等に人間の常識はありません。人の苦しむ様を好み、残忍さを尊います………それでも"捕らえる"と?』

確認するように尋ねる。……彼女の影は揺らがない。強い意思。何度言おうと無駄……悪い人ではないことは分かる。だからこそ、この人はいけない。

『……残念ながら、貴女がたに言えることはなにもありません』
「!どうして!」
『優しすぎるから』
「……え」

…それと、甘い。

『優しい者は命を斬ることが出来ない。……貴女は"捕らえる"と言いましたけどそれは不可能です。確かに、私なら可能です。ですが、貴女には無理だ』
「………どうして」
『弱いから』

言うとぴし、と空気が凍てついた。全員の呼吸が一瞬止まる。…彼女は目を見開き、それからゆっくりと閉じる。……怒り、だった。周囲の者も怒りを写している。

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ゆら - とても続きが気になる物語だったので、時間があるときに更新よろしくお願いします。頑張ってください! (2020年6月21日 12時) (レス) id: a43add877a (このIDを非表示/違反報告)
ユナナ(プロフ) - こんにちは!"浮世離れの今日"を見させていただきました!好きな漫画がコラボで出てきている…もう喜びを超えた嬉しさです笑 後の展開がとても気になります!技の名前も高クオリティで普通に鬼滅の刃にで出来そうです笑 また続きをお待ちしています笑 (2020年1月8日 11時) (レス) id: 0bea8b4a9d (このIDを非表示/違反報告)
JRPG(プロフ) - 作者です。更新しました。楽しみにしてくださっていた方遅くなりすみません…。沢山のコメントありがとうございます。全部読んでます。引き続きお楽しみ頂けたら幸いです。 (2019年10月31日 9時) (レス) id: 0e0a111648 (このIDを非表示/違反報告)
綺咲裕翔 - めちゃくちゃ面白いです!!続きが気になるー!楽しみにしてます!頑張ってください! (2019年10月27日 10時) (レス) id: 93b6603b06 (このIDを非表示/違反報告)
南無阿弥陀仏(プロフ) - 続き待ってます (2019年10月24日 14時) (レス) id: 1cf60bec73 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Justice RPG | 作成日時:2018年9月15日 21時

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