弐拾伍 ページ25
『……えすかれーたーが一番の山場だったな…』
「アハハ…まだエレベーターとかもあるけどね」
『…えれべ……遠慮しておくよ。これ以上は頭に入れられない。私は頭が良くないんだぞ』
「それいばることじゃないよね」
呆れた笑みを向けられ、眉間に皺を寄せて返す。
「そんな顔をしては折角の美人が台無しですよ」
『…………』
「おや……余計に深くなるとは思っていませんでした」
沖矢と名乗るあのお兄さんは意外そうに、けれどわかっていたかのように軽く驚いた。……この人には"影"がある。それは見て直ぐに分かった。この人の影は沖矢ではない。…詮索は面倒だ。けれどこのことを少年は知っているのだろうか。……もし知らないのなら、この男は少年を騙している。
少年は私の恩人だ。恩人にはその恩に報いたい。……たまには詮索もするか。
「それで…Aさん」
『なに？』
少年が区切りをつけたことで私も思考に区切りをつける。
「蘭姉ちゃんに言ってたことなんだけど…」
『ああ…記憶のことか。本当のことを言おうとも思ったんだが……君に聞いてからの方がいいかと思って』
「……うん。ありがとう。…ボクも蘭姉ちゃんに言うか迷ってたんだけど…色々考えて、やっぱり怖がらせたくないから伝えないでって言おうとしてたんだ」
少年の目は優しい目だった。余程蘭さんの事が大切なんだろう。
少年も不思議な影をしていた。少年の影もお兄さんと同じで、今見えている者ではない。けれどお兄さんとちがって、"影"ではなかった。……根本的になにかが違う。初めて見た影だ。
悪ではないのは分かる。…二重人格？いや、もっと違う…何か。
「これからも記憶喪失ってことでお願いしてもいい？」
『うん。まぁ、ここについて知らないのは本当だから演じる必要がなくて良かったよ』
言うとまた少年は苦笑いした。
「Aちゃーん！一通りは買ってきたよ」
蘭さんがこちらに駆けてくる。両手に大きな袋を持っていた。恐らく、私の為に買ってくれたもの。
『蘭さん。…本当にありがとうございます』
「い、いいよ！頭なんて下げなくて！…Aちゃんはどんどん私に頼ってね！」
蘭さんの笑顔にこちらも頬が緩む。彼女の影は彼女だ。純粋な人。少年が守りたくなるのも分かる。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1018人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ゆら - とても続きが気になる物語だったので、時間があるときに更新よろしくお願いします。頑張ってください！ (2020年6月21日 12時) (
レス) id: a43add877a (このIDを非表示/違反報告)
ユナナ(プロフ) - こんにちは！"浮世離れの今日"を見させていただきました！好きな漫画がコラボで出てきている…もう喜びを超えた嬉しさです笑 後の展開がとても気になります！技の名前も高クオリティで普通に鬼滅の刃にで出来そうです笑 また続きをお待ちしています笑 (2020年1月8日 11時) (レス) id: 0bea8b4a9d (このIDを非表示/違反報告)
JRPG(プロフ) - 作者です。更新しました。楽しみにしてくださっていた方遅くなりすみません…。沢山のコメントありがとうございます。全部読んでます。引き続きお楽しみ頂けたら幸いです。 (2019年10月31日 9時) (レス) id: 0e0a111648 (このIDを非表示/違反報告)
綺咲裕翔 - めちゃくちゃ面白いです！！続きが気になるー！楽しみにしてます！頑張ってください！ (2019年10月27日 10時) (レス) id: 93b6603b06 (このIDを非表示/違反報告)
南無阿弥陀仏(プロフ) - 続き待ってます (2019年10月24日 14時) (レス) id: 1cf60bec73 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：Justice RPG
| 作成日時：2018年9月15日 21時
