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もしかすると、Aならば何かを知っているかもしれない。
付き合って日すら浅いが、この間の休日は二人で出かけたばかりなのだ。
そのときに、なにかあったのかも。
「うむ……この時間帯だったら、音楽室だろうか」
ピアノが大好きなあいつだ。
日が俺たちの頭上にあるころは、必ずピアノを弾いているだろう。
さっさと聞いてしまおう。
俺はそう思い、ノートを閉じようとした。
だが、何かが引っかかった。
「……俺は今日、Aを一度でも見かけたか？」
手を口に当て、しばらく考えてみる。
だがふわふわとした気分が思考を邪魔して、思うように集中ができない。
＿＿まあ、探してみるか。
「もやもやするが、気分のせいだろうな。探してみる他ない」
自分にそう言い聞かせて、俺は荷物をまとめ音楽室へと向かった。
「……俺は、あいつがピアノ好きだということを知っているよな？」
何もかもが、夢のような気がしてきた。
先程、Aを見かけていないという疑問から、それは病気のように侵食されていく。
「俺は、確かにこの間二人で出かけたはずだよな？」
だが、なぜかこの疑問は、頭の中の霧を晴らしていくような。
不思議と、気分は悪くない。
＿＿そして、ついに最後の霧が晴れた。
「本当に、俺はあいつと交際していたのか……？」
＊3月27日更新＊
なぞい
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作者名：桃 | 作者ホームページ：
作成日時：2017年2月26日 19時
