▽ ブルームーン ページ2
．横山 side
もう十時か...
今日は久し振りにアイツの店に寄ることにした。
最近は撮影で全然呑んでなかったけど、
今日は、今日だけは自分を甘やかそう。
「※※まで、お願いします。」
稽古場からは、ちょっと離れてるから
タクシー捕まえて、揺られながら仮眠を取る。
しばらくして、運転手さんの声で目を覚ました。
『ありがとうございました〜。』
「あざっした。」
雨上がりの湿っぽい匂いがする。
舗装された道に出来た水溜まりを、昔したみたいに軽く飛び越えてみる。
昔から変わらんな、俺。
結構前に、店の前にタクシー停めたら
アイツにめっちゃ嫌がられたから、
ちゃんと学習して、歩くようにしてる。
そんな記憶を辿りながら歩いてると
相変わらずの貧相な入口が見えてきた。
誰にもお店ってわからんのがええらしい。
全然わからんわ。ほんまに。
「うぃっす。」
「いらっしゃい、待ってたよ。」
重い鉄のドアを開けると、
シックで、けど、豪華な、俺の単語力じゃ表されへんくらい、見事な内装の店内。
まあ、そんなに広くは無いんやけどな。
バーカウンターの奥で俺に向かって手を振る店主。
久し振りに見たせいか、一段と綺麗になった気がする。
「いつものでいいですか？」
「今日はとりあえず生にしとくわ。」
「珍しいね。疲れてるの？」
「おん、ちょっとな。」
質問の答えを聞きながら、流れる様な所作で生ビールと枝豆を出してくれる。
「今減量中でしょ？せめておつまみはヘルシーなのがいいよね。」
「おん、ありがとう。」
「ふふ、どういたしまして。」
それだけ言い残して次の飲み物の準備を始めた。
俺が生ビールは一杯しか飲まん事も知ってるし、
俺のお気に入りのカクテルも知ってる。
だから、ビールを飲み終えた頃には
新しい飲み物は待たずに飲める。
と、思ってたけど、今日はいつものとちょっと違った。
「今日は、ブルームーンにしてみたの。」
「ブルームーン？俺のやってた舞台と同じ名前」
「そう。その意味もあるんだけど、今日のメインはそっちじゃないでしょ？」
「..覚えててくれたん？」
「当たり前です。」
「ブルームーンのカクテル言葉は、【出来ない相談】ですから。」
彼女の記憶力と気配りにはいつも圧倒される。
透き通った蒼を一口分体に流し込むと
俺は彼女に【出来ない相談】をし始めた。
．
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くらり(プロフ) - j-oiku*さん» 初めまして、いつもありがとうございます。こちらは更新頻度が低いですが、ちょくちょく更新しようと思ってますのでぜひ長い目で見てやってください(笑) 今後もよろしくお願いします (2016年12月23日 1時) (
レス) id: 72063521c3 (このIDを非表示/違反報告)
j-oiku*(プロフ) - 初めまして。くらりさんの作品、いつも読ましてもらってます。このお話も含めて全部面白い！私好みです！これからも応援しています更新頑張ってください。 (2016年12月21日 20時) (レス) id: 057b3be6c4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：くらり | 作成日時：2016年7月31日 15時
