アーメン ページ10
．
マサキが私の涙で濡れた頬を指で拭って、
見詰めてくれるだけで、心がじんわり温かくなる。
「Aさんは泣き虫なんだね。」
「マサキのせいだよ、馬鹿。」
もうすっかり元気そうなマサキは
余裕綽々で私の頭を撫でたり、ドヤ顔したり。
ちょっとムカつくけど、元気なら何でもいい。
「とりあえず、カズさんに連絡したら？」
「うん、また心配掛けちゃうなあ。」
「私も心配で寿命が縮んだ！」
「ごめんごめんっ」
そう言って、病室を出て行ったマサキ。
ホッと私の心に、束の間の安堵が広がって、
また別の問題が生じる。一難去ってまた一難。
櫻井に、マサキとの関係を隠さなきゃいけないこと。
その逆も然り。
だけど、自分のことながら、
私にそんな器量があるとは思い難い。
「どうすりゃいいの...」
「何を？」
「っいや！何でもないよ！」
「仕事が大変とか？」
「んー、まあね？」
その後、担当医と看護師が来て、
本日中に帰宅出来そうならしていい、と許可が下りた。
ただし、１週間ほどは激しい運動などは控えつつ
動かな過ぎもダメだという注意付きで。
ゲージから開放された犬みたいに、
テンションアゲアゲで帰り支度をしているマサキに
ちょっとトイレに行く、と言って病室を出た。
「もしもし、いま大丈夫？」
『んん？大丈夫だけど、どした？』
さっきまで寝てました、と丸わかりの声で
櫻井が電話に出た。
「私、もう自分の家に帰れるようになったから、櫻井の家にはもうお世話にはならないで済むの。」
『そうか、それなら良かった。偶には遊びにくらい来てくれよ？』
「うん、分かってる。じゃあ、またね。」
『ちょっと待って、橋本。』
「なに？」
『好きだよ。』
それだけ言って、一方的に電話を切られた。
私はたぶん...真っ赤な耳をしているだろう。
熱い熱い、こんな歳になっても慣れないものだね...
携帯を仕舞って、病室に戻ろうとすると
もうすっかり準備を終えたマサキが出て来た。
「Aさん、耳赤いよ？熱ある？」
スラリと長細い綺麗な指で私の額に触れて、
またそれが余計に体温を上げる。
そんなことには全く気付かない、ギルティボーイ。
「熱ない熱ない、さ、帰ろ。」
「うんっ、帰ろっ！」
ああ、神様ごめんなさい。アーメン。
一番ギルティなのは私ですね。
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にな - 最後の方で感動して泣けました。笑える部分もあって面白かったです。 (2018年5月5日 22時) (
レス) id: d79385b6b6 (このIDを非表示/違反報告)
みーこ(プロフ) - ハハハ、まさかの展開！超面白い。ε=ε=(ノ≧∇≦）ノ (2017年8月16日 7時) (レス) id: 5ae3e13203 (このIDを非表示/違反報告)
みーこ(プロフ) - ああ、ズルい奴。 (2017年8月4日 20時) (レス) id: 5ae3e13203 (このIDを非表示/違反報告)
kiyomi(プロフ) - 頭殴られてどうなるかと思った(;つД｀)翔くん、身を引いちゃうのかな？ (2017年7月31日 0時) (レス) id: fa58efe3c1 (このIDを非表示/違反報告)
みーこ(プロフ) - うわあ〜、うわあ〜… この錦戸さん、あたしが一番苦手な人種だ！(泣) (2017年7月7日 21時) (レス) id: 5ae3e13203 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：くらり | 作成日時：2017年6月3日 23時
