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ひた、ひた、と廊下を歩く。
1番奥の部屋まで着き、深呼吸をして扉を開ける。
「……やあ。久し振りだね行人」
兄は、人懐っこそうな笑顔で手を振っている。
「……そうだな」
それは何ら昔と変わらないのに、何処か違和感を感じた。
まるで、得体の知れない生物が兄を喰っているかのような。そんな感覚。
「どういうつもりだ?」
「何が?」
「とぼけんな。一般市民を人質にしたり危険な目に遭わせておいて、お前は何がしてえんだ」
「兄に向かってそんな口を利くようになったとはね…躾がなっていないんじゃないか?親の顔が見てみたいね」
「黙れ。そんなことはどうでもいい」
俺と兄の空人は血が繋がっていない。だから、親も違う。
「……行人が一緒に居たあの子…日ノ川さんだっけ。あの子にしか用は無いよ」
「はあ?」
「正確には、あの子の母親になのだけどね。まあもうタヒんでるから。だからあの子と話したかったんだ」
「でも、思いの外強そうだったんでね。建物ごと人質にとってやったってワケ」
「何の恨みがあって」
「言わないと駄目なの?」
何を考えているんだ。思考が読めない。
「言いたくないなら言わなくていい」
「そう言われると言いたくなっちゃうな〜♪」
…何だこいつ。
「只の嫉妬さ」
「はあ?」
「あの子の母親。“こっち側”」
「それが何だ」
「俺が長だったのにね。ちやほやされんのあの人ばっか。面白くなくて殺 しちゃったあ」
途端、ぶわりと怒りが沸いてきた。
「人の命を何だと思って……ッ!!」
「それ、お前が言うか?」
はっとした。
「お前こそ、人の命をなんだと思ってる?」
兄の瞳には、先程の様な微笑みは無かった。
「12、3年前だよ、あの人がタヒんだの」
「そ、れが何だ」
「行人」
カチリ、と引き金を引く音がした。
兄は俺に拳銃を向けている。
「愛されたかった……1番に成りたかった……人に誉められたかった…ずっと…なのに…」
「俺の人生を邪魔する奴は、俺が消す」
冷や汗が背中を滑り落ちるのと、ほぼ同時だった。
2回の銃声。
「……僕が1番なんだよ」
薄れゆく意識の中、はっきりと聴こえた声。
『綾辻先生ッ!!!!!!!!』
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沙月(プロフ) - 佐伯先輩がいたら腐女子で会話したい((なんか、辻村さんおっとりしてない?綾辻先生かっこよすぎん?もう、好きです。 (2019年7月21日 0時) (レス) id: b7d8d46a43 (このIDを非表示/違反報告)
ふうゆず - とっても面白かったです!はぁ…僕も小説欲しいな…うううううううう (2019年5月3日 16時) (レス) id: 77992ccb5c (このIDを非表示/違反報告)
さそりんご - 赤珠(元 チョコうさ。)さん» ありがとうございまあああああす!!完結しちゃいましたけど、また文スト書いたら読んでくれると嬉しいですo(*⌒―⌒*)o (2018年8月29日 0時) (レス) id: 99a0ba4dc7 (このIDを非表示/違反報告)
赤珠(元 チョコうさ。)(プロフ) - 面白かったでえええええす!!!!!! (2018年3月28日 21時) (レス) id: 5fa7fae13e (このIDを非表示/違反報告)
さそりんご@さきいか - 謎さんさん» どぅおわあああ!!!ありがとうございます!!ハッピーエンドです笑 バッドエンドでもよかったんですが、やっぱり幸せになってほしいんでww はい!また作るつもりですので、その時は是非。。。´_ゝ` (2018年3月23日 15時) (レス) id: 62ceed44b7 (このIDを非表示/違反報告)
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