9.F ページ9
ドサっ、
F「…疲れた。」
まだ始まってもいないのに、どっと疲労感が押し寄せてくる。これから撮影って時にもう1日分の仕事を終えた気分だ。
綺麗に整ったベッドに大の字になって、寝転びながら遠い天井を見つめる。
微かに聞こえる人の声に耳を傾けながらぼんやりとおもむろに手を伸ばす。
特にこれと言って理由はないけど、その先にある想いを掴みたい一心でギュッギュッと手を握りしめる。
(こうやって簡単に捕まえられたらいいのに。)
幾度となく考えてしまう。
もうどれだけそんな卑しい気持ちと付き合ってきたのか。
コンコン、
静まり返る室内に響き渡るノック音。
急な出来事にベッドから勢いよく飛び起きる。
F「はい。」
T「おれ。」
(…たま。)
自分の部屋なのに、流れる緊張感と雰囲気に呑まれて中々その扉を開けない。
扉の向こう側にいるはずなのに妙な静けさのせいで、余計その扉を開くことに躊躇われた。
聞きたいのに聞きたくない。
そんな惨めな思考の繰り返し。
悶々と広がる嫌な想像をふるふると頭を振って打ち消す。遠慮がちにその扉に触れる。
T「やっと開いた(笑)」
F「…どうした?」
何を考えているのかわからない、そんなふわふわと笑ってお邪魔しまーすと声を上げるたまに、少し動揺しながら聞く。
俺に背中を向けたまま足を止めるたま。
振り返りもせずに、ぽつりとたまが呟く。
T「告白。」
F「…え?」
たまのセリフにドクンと大きく心臓が跳ねる。
拭い取ったはずの手汗が、じわじわと俺の手のひらに広がる。
T「みつにね、好きって言ったの。」
F「…っ、」
こっちを見ずに淡々と告げるたまの感情が読み取れない。ドクドクと忙しなく打ち付ける胸音を他所に、
F「…それで?」
震える動揺を押し隠して、当たり障りなく返事する。
おれの言葉に初めてこっちを向くたま。
くすりと笑って、おれを見つめる。
T「…宣戦布告…?(笑)」
F「…は?」
T「だってがやは、みつが好きなんでしょ?恋愛感情として。」
おれの気持ちに簡単にその名を付けて言ってしまうたまに、キッと眉間にシワが寄る。
思うことはあっても、言葉として吐き出すことはなかったその気持ち。
たまの言葉に、俯いていた顔を上げる。
それを確認したたまが、フッとその表情を変える。
T「悪いけど、がやには絶対譲れない。」
いつにも増して真剣な様子のたまに、思わず負けじと睨み付けてしまう自分がいた。
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作者名:ちぇり子 | 作成日時:2017年4月24日 2時