キミしかいらない。 (ページ4)

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４.Ｆページ4

仕事の一環ではあるけれど気心知れたメンバーと一緒ってゆうのはちょっと気が楽だ。
昨日まとめた荷物を最後にもう一度確認する。

二泊三日の奄美大島。
比較的落ち着いている仕事のスケジュール。
そんな中でのカレンダー撮影はちょっとした旅行気分だった。

再度戸締りを確認して部屋を出る。
タイミング良く着いたエレベーターに乗り込んでエントランスから駐車場裏口へと回る。

見慣れた車を見付けて小走りに近寄れば、お疲れ様ですと爽やかな笑顔で挨拶された。

Ｆ「俺が最後？」

マ「いえ。これから北山さんとこに向かいます。」

マネの言葉にピクリと身体が震える。
ただ名前を聞いただけなのに俺の心は容赦なく落ち着きなく騒ぎだす。

(重症だな…、)

自嘲気味にフッと微笑んで促された後部座席へと乗り込んだ。

Ｙ「おはよ。」

Ｆ「…はよ。」

ここ最近曝け出した自身の醜態を思い出して、妙に気恥ずかしい。
それを含めてかどうか果たして謎だが、どこか渉のニヤついた顔が俺の落ち着かない気持ちをさらに忙しくする。

Ｙ「昨日も言ったけど、こうゆう機会って意外とないからさ、本当、頑張りなさいよ？」

念押しするように俯いた俺に向かってわざわざ覗き込んでまでそんなことを言う。

(…いい加減、しつこい。)

Ｆ「わかってますよ、お母様。」

Ｙ「…お前を産んだ覚えはありません。」

Ｆ「いや、産めないでしょ。元々(笑)」

Ｙ「太輔が茶化すから。」

Ｆ「うん、ごめん。」

どこか緊張を含んだ雰囲気も渉のおかげで少し気が緩む。
そうこうしてたら、見慣れた景色が近付いて。

(…きたやまのマンション…)

持たれた窓からそこそこ綺麗な外観を見上げる。
いつもならここで少し時間を喰うんだけど、珍しく聞こえてきた声に、ドッ、ドッと煩く自身の心臓が胸を打ち付ける。

にかとじゃれあう、羨ましくも憎たらしい光景を目の当たりにしながら、どこか疲労感を漂わせている北山の姿。ぼんやりと窓の外を眺める横顔が酷く辛そうに見える。

いつもみたいに両耳にイヤホンをぶっ刺して音楽を聴いてる風。けれど音楽なんてこれっぽっちも流れない。

誰にも見つからないように…愛しい人を見たいが為に。
音楽聴いてるフリして目を閉じて時々アイツの姿を盗み見る。

(…眠そう。…寝不足？)

コクコクと首を振るう北山の姿がどこか愛らしい。

Ｆ「ふふっ(笑)」

Ｙ「…なに？」

Ｆ「何でもなーい(笑)」

可愛いなぁ…本当に。