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13.F ページ13

〜♪

繰り返し響くコール音。うんともすんとも言わない気配にまた電話を切る。
人通りの少ない廊下を足早に駆け抜けながら、慣れたようにその指をスライドさせる。


マ『はい、藤ヶ谷さん?』


F「ちょっと聞きたいんだけど。」


マ『それよりももうすぐお食事始まっちゃいますよ?』


F「北山の部屋、何号室?」


マ『はい?』


マネの言いたいことを理解しつつも今、俺にとってはこっちが最重要項目だ。不審に思いつつもすんなりと教えてくれるマネージャー。
マネの言葉を頼りに周囲に視線を散りばめながら、目的の部屋へと向かう。


(確かこの辺り…、)


北山の部屋へと近付くにつれ小さく聞こえてくる話し声。微かに拾う程度のその声でも誰の声かだなんて、すぐにわかってしまう。


(きたやま。)


静かに響く北山の声に、トクンと心臓を鳴らす。
キュッと締め付けられるその声が徐々にはっきりと聞こえてくる。


あぁ、好きだなって。
ふと思ってしまう。たったそれだけのことで。


(きたやま…っ、)


愛しい人目掛けて、一直線に。
こんな全力疾走はいつ以来か。


やっぱりそう簡単に消える感情ではないわけで。
一心に、誰にも渡したくない。おれだけのモノでいてほしい。もうそれしかなかった。


それ以上何もいらないって。
そう言えるくらい。


だからもう…これ以上は目を背けられない。
「好き」だって言ったら、キミはどんな反応をするだろうか。


どうかキミにちゃんと伝わりますように。


かちゃり、
その扉が開く。
愛しいその人を視界に捉えたらもうどうにもできない。


F「…ふぅ、」


自分の気持ちに覚悟を決める。
見つけたキミに向かって、一歩踏み出す。


好きだ。
好きだよ、北山。
誰にも渡せない。渡したくない。


キミが欲しい。
全部が欲しい。









おれだけの…キミでいて。
…キミしかいらない。

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作者名:ちぇり子 | 作成日時:2017年4月24日 2時

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