12.F ページ12
(…何やってんだよ、北山。)
中々着信に気付かない北山に、気ばかりが焦って、どうにもならない。軽快なコール音が響く中、プツっと急に途切れた音。
K『…っ、…もしもし。』
突然に訪れた、耳に伝わるダイレクトな声音にどきっと心臓が跳ねる。
もう何年も聴いていなかった声音のような…どこか心地いいその声に一瞬絆される。
(落ち着け…おれ。)
F「…俺だけど。…今、いい?」
どきどきと煩い心臓をどうにか宥めながら、もうどうにでもなれ精神で話し始める。
K『…っ、な…に、』
電話のせいかどこか気恥ずかしそうに遠慮がちに応える北山。
それすらも可愛く愛しいと感じる瞬間に、
F「……うん、」
返事をしたまま、何も言えずにポワンと固まる。
言えば奇跡に近いこのひと時をぼんやりと実感しながら、ふと電話口から聞こえる微かな物音。
途端に意識がカッと覚醒する。
F「…北山?」
俺の呼びかけに中々返ってこない返事。
考えたくない想像が俺の思考を掠めていく。
もう一度声をかけようと口を開いた時、
K『…っ、ごめん藤ヶ谷、急ぎじゃなきゃ後でもいい?今…、
T『しー…、』
慌てふためく北山の声に合わせて、微かに聞こえてくる見知った声音。
それに、ドクンっと異様に心臓が大きく跳ねる。
何となく聴いていたその会話も、途端にはっきりと色んなモノを拾おうと意識が集中する。
K『…っ、ちょっと…たま…っ』
北山から聞きたくなかった名前が、心の準備もままらないまま、いとも簡単に零れ落ちた。想像していた嫌な展開が確信に変わる。
F「……たま?」
おまけに遥かに想像したくない艶めかしい北山の漏れ出る声。
ドクドクと煩いくらいにおれの心臓が悲鳴を上げる。
K『っん…!いや、何でも…ないっ、』
止まることない北山のその声に立ち止まっていた身体がやっと動き出す。ぼんやりと淡い光を醸し出す廊下を足早に駆け抜ける。
(北山の部屋…っ、何号室だっけ…、)
スマホに耳を擦り付けながら、北山を呼び止めた瞬間、
K『っんゃ…ごめ…ふじがやっ、後で掛け直すっ、』
そう言った北山に、口を開きかける…、
T『…ガヤには渡さないって言ったじゃん。じゃ、またね。』
けど、突然の電話口の主に、何も出てこない。
嫉妬丸出しの感情と北山への独占欲に葛藤する中で、気付いたらプツっと切れてしまっていた繋がり。
無機質に真っ暗になったスマホを見つめて、痛いくらいにそれをぎゅっと握りしめた。
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作者名:ちぇり子 | 作成日時:2017年4月24日 2時