1.F ページ1
聞こえてきた話し声にドアノブに掛けていた手を思わず静止する。
なんとなく聞きたくない。
そんな気がしてそこから離れたいのに、おれの足は中々言うことを聞いてくれない。
楽屋の前でボーッと固まる俺に、時折怪訝そうに局のスタッフがチラ見する。
扉の向こうから聞こえてきた『付き合ってほしい』と言う言葉。
それ以上何も聞きたくなくて、楽屋に背を向ける。
足早に局の廊下を駆け抜ける。キョロキョロと周囲を見渡して楽屋からそれ程離れていない喫煙所に滑り込んだ。
F「って…タバコもライターも楽屋じゃん。」
それ程に動揺していたのかもしれない。
普段こんなに吸いたいと思うこともないタバコに、異様に執着してしまう。
胸がざわざわと落ち着かない。
たまの声と…薄っすら聞き取れた声は、否が応でもすぐにわかってしまうその声音。
F「…たまが…ねぇ。」
まさかおれと同じように北山をそうゆう目でみてるなんて思いもしなかった。
いや…自分のことでいっぱいいっぱいで、ただ気付かなかっただけかもしれない。
(今更、どうしろっての…。)
たまが北山を好きだったとして、結局おれは何もすることはなくて。
もうずっと前に手放した筈の気持ちだった。
けれど、どうして今、こうも騒がしいんだ。
ギューッって胸が押し潰されそうだ。
F「…バカバカしい。楽屋戻ろ。」
チクリとする胸の痛みを見て見ぬ振りする。
自分が傷付きたくなくて、その気持ちを押し殺して…今までやってきたんじゃないか。
北山とあれだけの距離を図って。
今更、どうしようもない。
そうやって自分に言い聞かせてたらまたさっきと同じ光景が広がっている。
楽屋を目の前にして、震える指先。
気付きたくなくて、気付かれたくなくて。
思わず自分の手でその震える指先を押さえつけた。
(…落ち着けよ、おれ。)
ふぅっと深呼吸する。
何を躊躇うことがある。
いつもの楽屋じゃないか。
いつも通りに…すればいい。
そうやって何度も何度も言い聞かせた。
だけど、どうしてこんなに苦しいかな…、
いい加減、早く消えちゃえばいいのに。
こんな…ややこしい気持ち。
F「…北山が欲しいだなんて、マジ馬鹿げてる。」
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作者名:ちぇり子 | 作成日時:2017年4月24日 2時