・・・ ページ27
せっかくだしコーヒー入れてもらおうかな、と再び上がったジェミンくんに胸を撫で下ろす。ソファでくつろぎながら2匹の写真を撮っているジェミンくんとの名前に関係を付けるとしたら何が当てはまるのだろうか。“親友”はジェノくんで“特別”があの子なのだとしたら、私はどこのポジションに配置されているのだろう。
「Aちゃん」
『なあに？』
「ふふ、Aちゃーん」
『なあにって、』
「…その間延びした言い方可愛くて好き、他の人には言わないでね」
ジェミンくんから出てくる好きや可愛いは、たぶんそんなに深い意味なんて無いんだと思う。あの子だって私と同じくらい…いや、それ以上に受け取っていた。それで「わたしもナナのこと好きだよ」って、それが当たり前のように、花が咲いたような笑顔で返していた。お互いがお互いの関係を理解していて、恋とか愛とか、男とか女とかそういう感情がないにしても、私は人に対して好きという言葉をそんな簡単に使いたくない。
「…ごめん、また困らせた？」
『ううん。これは私の気持ちの問題で』
「悪いことではないんだね？」
『うん』
私が入れたコーヒーを大袈裟に褒めて飲みきってくれたジェミンくんは、「帰るの面倒になっちゃった」とソファに横になった。目を閉じて微動だにしないジェミンくんにブランケットをかけて、横顔を観察する。
成績を最低限キープできてて式典の時さえちゃんとしてれば特に何も言われないような、校則は緩めな高校だったから、ジェミンくんはちょいちょい髪色を変えててそれを記録しているファンの子がいた。「ジェミンくんの黒髪は卒業式にしか見られないの！」頼んでもいないのにそのメモを見せつけてきた子の言葉を思い出す。
『…黒髪はレアなんだっけ』
「実習もあったし大学ではずっと黒だったよ」色落ちなのか、再会したときより明るくなり始めた髪を指摘したら、ジェミンくんはそんなようなことを言っていた。当たり前だったことが当たり前じゃなくなって、レアだったことがレアじゃなくなる。
友人関係も、環境によって変わっていくのが普通だと思っていたのに、あの子は変わらずジェノくんが隣にいてジェミンくんに気に掛けてもらっているようだし、変わるならそれも変わってほしかった。お姫様はいつまでも経ってもお姫様なんだな、とジェミンくんが寝言で呟いた名前を聞いて、体が冷えていく。
私は結局、お姫様どころか誰の1番にもなれないんだろう。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1213人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
うー(プロフ) - kikiさん（ ; ; ）ヒロインお疲れさまでした！！！ずっと最高だったんですけど、最後も理想の展開すぎてきゅんきゅんが止まりません（ ; ; ）これから番外編も期待してしまいます…(笑)終わってしまって寂しい感じもしますが、これからも素敵なお話し待ってます！ (2022年12月12日 8時) (
レス) @page44 id: 938e109c39 (このIDを非表示/違反報告)
Kiki(プロフ) - hkrさん» 他の作品も読んでくださりありがとうございます(;_;)ジェミンくんはきっと好きな子に甘いんだろうなって想像で書いてるので最高だなんて嬉しいです(;_;)これからもお願いします〜！ (2022年12月11日 16時) (レス) id: 8611e65663 (このIDを非表示/違反報告)
hkr(プロフ) - kikiさんいつも更新ありがとうございます( T_T)！ 他の作品も大好きなんですけど、今作がもう大大大好きで…♡ ジェミンさん最高すぎます😭 これからも応援してます🤍 (2022年12月10日 1時) (レス) id: fcc5d5eeb6 (このIDを非表示/違反報告)
Kiki(プロフ) - ありすさん» いつもありがとうございます(;_;)自分でもどうなるか分からないのですが楽しんで頂けるように頑張ります！ (2021年8月9日 9時) (レス) id: 8611e65663 (このIDを非表示/違反報告)
Kiki(プロフ) - うーさん» ありがとうございます！今度からはこのお話中心に更新するつもりなので、お時間あるときにお読みください(^^) (2021年8月9日 8時) (レス) id: 8611e65663 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：kiki
| 作成日時：2021年6月14日 21時
