【ｄ！】薬売り兼魔法使いです！【軍パロ】 (ページ32)

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三人寄れば誘拐の話ページ32

「ええ子やった、Aちゃん。」

呑気に茶をしばいていた大先生の首根っこ掴み、馬車内の出来事を細かく報告させる。その顔はどこか幸せそうで、非常に腹が立つ。

「俺が鼻グズグズさせてたらな、水筒に入れてたスープ分けてくれたんよ。ネギとショウガのスープ、美味いし飲んだら鼻も良くなったし最高やった。」
「ネギええなあ。」

俺も頼んで作ってもらお、とゾムが呟くがその言葉に一切の敵意を感じられない。どうやらあの女はグルッペンを含めた三人を骨抜きにしてしまったようだ。

「トントンは何でそないに警戒するん？」
「当然やろ、なにもんかわからんのやぞ。」

俺がしっかりせなあかん、二人の腑抜けた顔を見ていると強く痛感する。

「まずはグルッペンの警護や。ただでさえサブハト国に寄り道して面倒なことになっとるからな。大先生、ホテルの手配は任せた。」
「頼んだら一緒の部屋に泊まらせてくれへんかな。」

俺は大先生の頭を加減することなく叩いた。ばこんといい音が鳴る。
いそいそと準備を進めていると、ゾムが窓枠に足をかけ首だけこちらに向けながら口を開いた。

「警備とか警護とか面倒やわ。トントンすまん、やっぱり誘拐してくるわ。よくわからんけど二人ともさらえばええんやろ？」

待てゾム！と叫ぶ前にゾムの姿は消えていた。

「シッマとショッピ君には俺から連絡しとくから、トントンはゾムと一緒にあの子頼むな。」
「誘拐するん！？あほか？」
「トンチ、誘導するより誘拐して国に連れ帰る方が楽やん。これ以上グルちゃんのわがままに振り回されるんのも嫌やわあ。」

大先生は煙を一吐きし通信機でここにはいない二人に指示を出す。コネシマとショッピ君にはグルッペンと女の見張りを頼んでいた。怪しい行動は今のところないようだ。
しかし、誘拐。一番手っ取り早いが、万が一失敗したらどうなることやら。

それにしても可哀そうな女だ。別に悪いようにする気はないが、いきなり誘拐されるのだ。しかもゾムとコネシマとショッピ君という死角のないメンバー。哀れ、憐憫、気の毒、不憫、そんな言葉が似合う彼女に同情する。

「さらうなら夜やんな？チャンスは夕飯前夕食後の二回あるけどどっちにする？」
「軽いわあ、これから人一人さらう発言とは思えんぐらい軽いわあ。」