愛をあなたに「やっと会えた」�� ページ41
『日々樹渉』
彼女を見たのは、夢ノ咲に入る少し前。
街で偶然見かけた、あるチラシだった。
『演劇教室……』
センターで自信満々にセリフを言っている彼女。
目を惹かれてしまって、そのすぐ翌日に見学に訪れた。
扉の端から覗くと、舞台の上で彼女が立っていた。
人の気配のないその中でも、彼女はたしかに『観客』を感じ取っていた。
「君のためなら、私は何だってやってやる。ただ君がそうやって自分を投げ出そうとするのだけは、君に何と言われようと止めてみせよう！
「今だけ私のわがままを聞いてくれ、その分、君に尽くすと誓うから。」
一瞬。
彼女と目が合った気がして。
思わず扉に背をつけ隠れた。
どきどきとする鼓動は、普段したことのない緊張感からか。
それとも、別の何かなのか。
『やはり世界はまだ、愛と驚きで満ちていますね。』
「だからこそ面白い、って貴方は詩人だね。」
ころん、と転がるような綺麗な声にぴくっと肩が跳ねる。
扉の板一つ向こうに、自分と同じくらいの熱を感じた。
体温、つまり彼女がすぐそこにいる。
そう思うだけで、何故か口角がゆるんだ。
『貴女、『観客』のための演技をする、良い役者ですねえ。』
「…どうかな。私から言わせればただの一人相撲だよ。『観客』のために演技をしたって、『私』を見てくれる人はいないんだから。」
彼女は、あえて私の顔を見ようとはしなかった。
否、彼女自身の顔を私に見られたくなかったからかもしれないが。
その声にはもう冷めきった感情が入り混じっているような気がしてならなかった。
『貴女は貴女のしたいように、自由に生きていいんですよ。家が窮屈に感じるのなら、外に飛び出してみてはいかがでしょう？』
「…貴方は私を励ますのが上手いね。けれど、この家を窮屈に感じることは、あってはならないことだ。」
そのまま、扉の熱は消えていった。
ーーー…
____「だからごめんね、なんて死んでも言わないけどね。」
この出会いは、誰にも言う日は訪れないだろうと思う。
せめて、目の前で取り乱している可愛いこの子が気づくまでは。
私だけの宝物にさせてほしいんだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 274人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
生しょうが - 澪。さん» 同感です…！楽しみにしてもらえて嬉しい限りです！更新頑張ります！ (2022年9月4日 22時) (
レス) id: 1856a8e0e6 (このIDを非表示/違反報告)
澪。(プロフ) - 司くんは丸いぐらいが可愛いですよ、😌 いつも投稿楽しみにしてます！身体には気を付けて頑張ってください〜🔥 (2022年9月4日 20時) (レス) @page38 id: ebb5373f91 (このIDを非表示/違反報告)
生しょうが - 一織さん» コメントも応援もありがとうございます！ぜひぜひ楽しんでいってください！ (2022年8月18日 22時) (レス) id: 1856a8e0e6 (このIDを非表示/違反報告)
一織(プロフ) - 続編おめでとうございます！これからも楽しみに読ませていただきますね〜！ (2022年8月18日 21時) (レス) @page4 id: a117ee3fb5 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：生しょうが x他1人 | 作成日時：2022年8月18日 13時
