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「どんな歌にすべきなんでしょうねえ」
「やっぱライブだからしっとりした曲は良くないんじゃね」
「そう?俺そういう曲ライブでやる人割と好きだけど」
と、首を傾げる雅斗くん。
3度瞬きをして、彼の瞳はこちらを向く。
ドイツ生まれドイツ育ちかつドイツ人のお祖父さんを持つドイツドイツした日本とドイツのクォーターである彼、雅斗くん。
今は金髪だからなんとも言えないけど地毛は明るい茶色と言うより暗い栗色の髪色に日本人と比べたら彫りの深い顔。それでも日本人に溶け込んでしまうから不思議だ。
彼のドイツドイツ感を最も顕著に表しているその深い深い青に染められた瞳は本当に美しくて、あまりにも綺麗で。その深い深い青に見つめられることに、出会って6年以上経った今でも慣れず、少々たじろいでしまう。
「まあ最終判断はボーカルさんに任せますけどね」
「...それ世間一般では丸投げって言うんじゃないかなあ雅斗くん」
「え?何?じゃあ俺たちが指定した曲何でも歌ってくれるってことね?」
「え」
「シューベルトの歌曲『魔笛』歌って」
「無理ですごめんなさい撤回します」
「よかろう」
紺色のベースをいじりながら口を開くのは彼。
「取り敢えず王道選んどけばいいんじゃね」
ぎゅん、とベースが鳴って、また一言。
「1年だし」
「うわあああああ立場の違い!!俺も目立ちたい!!目立ちたいから銀髪にしたのに!!」
「なんて魂胆の持ち主だよ」
「だって高校生だよ!?何をやっても許される高校生!!」
「そんな事ないけどな」
「マジレスいらねえんだよ漣!!」
ふ、と息を漏らすように笑う彼の横顔が西陽に照らされ、その優しい顔立ちが際立つ。
笑う時に周りの空気が融けるような笑い方は初めて会ったあの時から、幼稚園の時から、小学校の時から、中学の時から、ずっとずっと変わらない。
どんな時でも、彼の時を重ねる毎に頻度が少なくなったその笑顔を見る度に安心する。...気がする。気だけ。
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いちご - 動かしてください。頼みますから!1コメ万歳 (2020年6月14日 14時) (レス) id: bc261c15a3 (このIDを非表示/違反報告)
Noel*26(プロフ) - いちごさん» story1で言ったけどな(大声)うるせえネタバレすんな まあ彼の恋が動くか否かはお楽しみに... 1コメおめでとう (2020年6月7日 11時) (レス) id: 3a6dfc07f6 (このIDを非表示/違反報告)
いちご - 雅斗くんドイツ入ってたんだ知らなかった笑また昔のようによく笑ってくれるためにはあの子が必要だね・・・ (2020年6月6日 22時) (レス) id: bc261c15a3 (このIDを非表示/違反報告)
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