α indi

おしうり、ほしがり＿ko ページ31

好きと、大好きと。



「こうちゃん」



愛しい彼の名前を告げれば、呼ばれたその人は振り返る。

こうちゃんはしっかりと見据えた私の視線に、初めは不思議そうに視線を返すばかりだったが、「どうしたの」と柔らかに笑む。

仕事をするときに、勉強に勤しむ時に、ビー玉のように透き通った瞳を、まるで外敵からそっと守るようにと外界から隔てている眼鏡レンズ。

そこに私は映っている、古ぼけた電球の光を反射して色づいた、輪郭のぼやけた私の像自身と視線を交わす。



「好きだよ、大好きだよ」



一語一句、噛み締めるように。

愛情、独占欲、服従、願望、尊敬。

ありとあらゆる君への想いを乗せて、奥底に、心髄まで響くように。



「どうしたの」


「好き。好き好き……」



苦笑いを浮かべるこうちゃんなんて気にもせず、男性らしい骨の浮き出た手を握り締める。

互いの右手の薬指、銀の指輪が色褪せぬ控え目な光沢を放ち衝突する。

呪文のように愛を囁き、捉えた手を離さぬように強く握り、相手に、はたまた自身に言い聞かせるかの如く繰り返す。

そこには純粋さの欠片もないのやも知れない。

しかし身体が、脳が、心が。

愛を叫びたいと望み、それに従うがままに言葉を連ね重ねてゆく。



「僕も好き。Aのことを世界で一番愛してるよ」


「私も。いつまでも、何があっても好き」



“好き”の二文字には魔法がかけられている。

それが容器の容量を越えた液体が耐えきれず溢れたような、我慢のきかない自分の言葉と。

山彦のように同じだけ、時にはあげた分以上になって返ってくるこうちゃんの言葉と。

語録は一致すれど重さが違う、彼の音色で音が紡がれるだけで脳髄まで幸せで痺れる。

それがより一層歯止めをきかなくさせて、また溢れる、溢れる、止まらない。

重ねた手を絡めて、異なる双方の振動が皮膚を揺らすのにうっとりと黄昏て。



「好き、好き好き好き好き」



足りない、たりない。

伝え足りない、貰い足りない。

口頭だけでは収まらず、もどかしさを埋めるように唇を奪うように重ねる。

啄むそれから、もっと奥深くへと、欲するままに求める。

もっと愛を叫ばせて、もっと愛を受け止めさせて。

どれだけ補充しても、穴の空いた私が満たされることはないけれど。

せめて、衝動にかられたその時だけでも、乾いた砂漠に刹那のオアシスを。



***



実は一番それっぽいkwmrさんにはまだ歪んだ作品がないという。

やーらしか＿fkr→←アミニズムの瞳＿izw

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