アミニズムの瞳＿izw ページ30
ふと目が覚めればまだ夜中、成人してからは割とよくある光景。
喉の乾きを潤そうと冷蔵庫のあるリビングに向かう。
スリッパも靴下もない素足にフローリングの硬さが伝う。
深淵の廊下から漏れる人工の灯、まさか電気を消し忘れたのかと思いつつ、明かり差すその部屋に足を踏み込む。
＿＿と同時に、硬い物体同士がぶつかる高い音。
「……あ、拓司君」
散乱した白の破片の中央、入り口に突っ立つ俺の名を呟く正体は家内でも、ましてや泥棒でもない。
愛しい俺の恋人は＿＿Aは、中腰の体勢のまま手を宙にさ迷わせている。
その体勢のまま、彼女は「お皿、割っちゃって」と伏し目がちに、さほどショックではなさそうに詫びる。
「ケガしてない？」
「ダイジョブ、ビニール袋持ってきて」
一瞥もくれずに淡々と俺をパシるA。
言われるがままに7で11なコンビニの袋を彼女へと差し出し、お礼の言葉を貰えば仕事終了。
箒と塵取りとを巧みに使って、慣れた手つきで残骸を処理する姿を眺めるだけ。
「勿体無いなぁ……」
ポツリ、LEDライトを反射する皿の破片を拾いつつAが溢した。
彼女は物を大切にするタイプだ。
貧乏性といえば聞こえは悪い、しかし物をぞんざいに扱わないのは良いことだ。
「まあ割れちゃったのは仕方ないし」
「でも……」
そんなAの唯一とも言える短所。
思い入れが強過ぎる故に、物が捨てられないし未練がましい。
その上、人間にはそれほど執着しないらしい。
半透明の袋に詰められた残骸に恍惚の眼差し、胸がチクリと痛む。
物には執着する癖に。
「何そんなに渋ってんの」
Aの手元から乱暴に袋を奪い取り、部屋の隅に置かれたゴミ箱に投げ捨てる。
中でゴミ同士がぶつかる鈍く煩い音が、Aが何か言いかけたものをかき消す。
そんなものに愛着なんて、俺には愛の言葉もろくにくれないのに。
こんな用なしじゃなくて、俺のことを見てよ。
考えれば考えるほど苛立ちが募る。
「……ご、ごめん」
流石に俺の負の感情を読み取ったのか、涙目で訴えるA。
その目が俺を捉えてくれていると認識するだけで、怒りはどこかへ飛んでしまった。
怯える彼女の頭を優しく撫ぜれば、不安げな色は幾らか薄れたようだ。
「明日、雑貨屋にでもいこっか」
俺の提案に、Aは嬉しげに頷く。
嗚呼、可愛い、大好き。
Aにちゃんと見て欲しい。
＿＿君の瞳を、買えたら良いのに。
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やまうみ。 - 山さん» ありがとうございます！許可とらなくても良いんですか...？やっちゃいますよ...？山様も、僕の作品で書きたいものがあればどうぞどうぞ(無いと思うけど) 注意書しておきます、ありがとうございます！これからも続く限りずっと応援と尊敬と敬愛を忘れません！ (2019年10月22日 10時) (
レス) id: e8e6962fde (このIDを非表示/違反報告)
山(プロフ) - やまうみ。さん» 全然大丈夫ですよ、寧ろ許可なんて貰わなくてもどんどんインスパイアして貰えば…… 注意して欲しいこと……は、そうですね。万が一読者様に『パクりなんですか？』と聞かれたら事情説明がややこしそうな気も……その作品の中で注意書きは書いた方がいいですかね？ (2019年10月22日 9時) (レス) id: c5ddeb2343 (このIDを非表示/違反報告)
山(プロフ) - echoeighter8さん» 了解しました！他の作品も急ぎ足で書きますのでお楽しみに…… (2019年10月22日 9時) (レス) id: c5ddeb2343 (このIDを非表示/違反報告)
やまうみ。 - 「時間制限賃貸彼氏」という作品をお相手と所々を改変して書かせていただいてもよろしいでしょうか。いや、ダメだったら全然断っても良いんです！この間のは拒否権がない感じになってしまったので。良いかダメか、注意してほしいことなど教えてください！ (2019年10月22日 8時) (レス) id: e8e6962fde (このIDを非表示/違反報告)
echoeighter8(プロフ) - 山さん» 続編書いていただけるなら全然待ちます！ (2019年10月21日 13時) (レス) id: a38f594748 (このIDを非表示/違反報告)
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