α indi

まやかし＿kwmr *inspire* ページ21

此方、やまうみ。様の作品、『嘘か真か』からインスピレーションをうけた作品です。

何卒ご理解下さい。



***



ポーカーフェイスで、あまり考えが読まれないと、自分でも自覚している。

良い意味でも悪い意味でも型に填まらない僕は、動画でもその片鱗を露にしたりしなかったり。

『柔軟な発想が羨ましい』『流石神』と様々なコメントを貰うが、実際僕はそんなに尊敬されるような人間じゃない。

ただひねくれた人間なだけだ、あと他に興味が薄めで利害に敏感なだけ。

それに、上には上がいると相場が決まってる。



「なぁ河村、文科三類の彼女知ってるか？」


「え、お前彼女出来たの？」


「違ぇよ、首席で入った笹倉のことだよ」



噂に疎く情報網の狭い僕には、周知された情報すら入ってこない。

どうやら噂の彼女は笹倉Aという名前だそうで、才色兼備な淑女だという。

上品でその端麗な容姿に見惚れる人は続出、しかし彼女には彼氏が居た経験がないそうで。



「高嶺の華だとしてもさ。今まで彼氏持ちの経験無しなんて、相当お堅いみたいだね」


「それがそうじゃないみたいなんだよなぁ」



その驚きの理由は、兎に角嘘つきなんだそう。

女版伊沢だ、と思ったのは双方に失礼なので口にチャックをしておく。

あまりにもその頻度が多く、且つ自然にずけずけと放つ為話す方の精神がもたないんだそう。



「皆弱いなぁ」


「いや、河村も会ったらわかる。あれを面と向かって言われたら相当イラつく、あのルックスでも」



そうは言われたものの、生憎ミーハーじゃないんでね。

確かに、ちょっと同類の匂いがしそうな人物だとは感じたけれど。

特に気にすることもないか、と記憶の片隅に追いやったそれは、その日のうちに掘り返されることとなる。



「あら、お久しぶりね」



覚えのない声、振り返れば割と小柄な女性が。

違和感と悪い予感は見事的中。



「貴方が河村さんかしら？噂に違わず不細工な方ね」


「……お褒めの言葉をどうも」



一回のやり取りで粗方悟った。

これは嘘とも本当ともとりづらい、前者なら傷つき後者なら舞い上がった人になってしまう。

エイプリルフール企画を彷彿とさせる人だな、対義語をとるところの自由さとか。

整った童顔が作る大人びた笑み、鈴のような声から放たれる棘のある言葉。

緩いカールが特徴の焦げ茶の髪はハーフアップにされており、正しく令嬢と呼ぶに相応しい容貌。

第一印象は苦手意識から始まった。

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