＿ ページ45
「こうちゃ……ファルさっ……ぜっ、絶対手ぇ離さないでよ……」
「今さらだけどさ、俺Aさんのことカメラで撮れないわ」
「音声……もマイク飛んでいきそうだから無理っぽい？」
「うん」
結局乗ることを余儀なくされた私は、こうちゃんとファルさんの間に乗り両手を握って貰っている。
正直こんなの気絶しそうだ、このまま魂が抜けてしまうのではないかという位には絶望してるし緊張してる。
「いってらっしゃーい」なんてアナウンスに最早苛立つ余裕もなく、着々と近づく死への道のりに恐怖するばかり。
「足！足離れたっ!!」
「はいはい、暴れたら怪我するよ」
行きどころのなくなった足が、重力に反して強制的に上がる身体と反発して痛い。
景色がどんどん遠退き、下にいる皆が豆粒みたいに見える。
このまま食べれるんじゃない？なんて考えてないと今すぐにでも発狂してしまいそうだ。
「おー高いねぇ」
「あ”ぁぁぁ!!無理！無理っ!!」
「Aちゃん下見なきゃ良いんじゃ」
見なきゃ良い？人間の心理ってのは不思議なもので、そんなの分かってても目がいくものなんだよあぁ怖い。
なんでそんなにファルさんは余裕綽々なの、なんでポンコツこうちゃんは高いところ平気そうにしてるの。
いつ落ちるんだろう、心臓が煩い、痛い。
このまま私本当に死ぬんじゃ？
「Aちゃん」
ぎゅっ、と握る手の力が強くなる。
眼鏡を外したその顔は、丸くてちょっと童顔。
それでも今は安心の源に化けている。
「ひっ……」
「ありがとう」とお礼を言う前に、最初の落下が始まる。
工事現場の音さながらの重厚な機械音。
自由落下よりも速く落ちる椅子、物理の力に従いその場に居ようとする身体を押し潰す。
浮遊感と落下、まるで上に落ちていくかのようで。
喉を痛めるほど叫ぶものかと思ったけど、唐突過ぎてそんな暇はない。
ブレーキが掛かって、また地に下りる。
空気抵抗で足は伸びて、肩にはレバーが食い込んで、とてつもなく痛い。
「お疲れー」
「罰ゲームどうだったー？」
そんな声が聞こえるから、多分終わったんだろうな。
待つ時間の苦痛は永遠かと思われたけど、その瞬間はあまりにも呆気なく終わってしまった。
「こうちゃん……」
「ん？」
「怖かった……」
「お疲れ様、頑張ったね」
微笑むこうちゃん。
もうフリーフォールは懲り懲りだけど、こうちゃんが一緒なら良いかも。
なんか新境地開けました。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 131人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「短編集」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
杠-ゆずりは-@発狂同盟 - 山さん» あっ、迷走してらしてるんですね…私は、最後にきっぱり片付ける文(？？？)というものが好きでして…w特にfkrさんの誘拐(？)の話みたいな終わりかたが好きなんです〜あっ、ご丁寧にどうも…此方こそお世話になります(？) (2019年10月8日 21時) (
レス) id: 550abac7bf (このIDを非表示/違反報告)
山(プロフ) - 杠-ゆずりは-@発狂同盟さん» 了解しました。とても素敵なシチュ……おみそれしました(謎) 個人的に完結方法に迷走する中、そう言って頂けると大変自信に繋がります。どうぞ続編でもご贔屓に(??) (2019年10月8日 21時) (レス) id: c5ddeb2343 (このIDを非表示/違反報告)
杠-ゆずりは-@発狂同盟 - 山さん» いや、まぁ…全部好きです((((尊いことに変わりはないのでおっけーです(((り、リクエスト…！私はkwkmさんが大好きなので、夢主ちゃんが振られたあとに慰めて付き合う…的な…？(語彙力なくてすみません)のがみたいです！検討していただけたら幸いです…！ (2019年10月8日 21時) (レス) id: 550abac7bf (このIDを非表示/違反報告)
山(プロフ) - やまうみ。さん» 了解致しました。区切り上続編でのご提供となりますのでご了承下さい。 (2019年10月7日 21時) (レス) id: c5ddeb2343 (このIDを非表示/違反報告)
やまうみ。 - 先程はありがとうございました(土下座) 浅紅に嵌まれ大好きです。山様のガチ勢ですのでリクエストします(？) どこか儚く消え行きそうな夢主ちゃんをymmtさんが好きになるお話が見たいです。エンドは恋に落ちるところでも結ばれるところでも。シチュはお任せします。 (2019年10月7日 21時) (レス) id: e8e6962fde (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
