Apatite

狂渦巻く栄誉＿fkr ページ23

目が覚めたら、私は暗闇の中に居た。

……否、暗闇ではない、私は確かに目を開けている筈。

顔の上半分に違和感を感じ触れようとするが、腕は途中で何かに引っ張られ持ち上がることはなかった。



「……は？」



やっと出た私の驚愕を含んだ声は、反響して何度も何度も木霊する。

私が居るのは、五感の一つ、視覚が遮断された世界。

人間が情報を仕入れる際、視覚からの情報は平均で約八割だとどこかで聞いた。

黒で埋め尽くされた世界、辺りの状況を把握する上で頼りとなるのは耳から聞こえる音だ。

さて、今の状況をなるべく正確に理解しなくては。

まず始めに、私の視界を塞ぐ物について。

布のような質感で負荷は軽め、しかし隙間から光が漏れる様子はない。

専用のアイマスクみたいな代物、私が置かれた状況はかなり入念に準備された物である可能性を示唆している。



「……くそ、何なんだよこれ」



つい口が悪くなってしまうのはしょうがないと思う。

次は四肢の自由を奪うこの拘束について。

私は今座った状態にいる、そして足は今座っている椅子の足にくくりつけてあるのだろう。

多分素材はロープ、流石に捩ったぐらいではほどけないだろう。

動くのは足首から先、此方では戦果は得られそうにない。

次は腕、此方はある程度は可動域があるが決して目元には届かないようになっている。

手首に負荷がかかっているから、恐らく手錠的な何か……鎖、というよりは丈夫な紐のような手触り。

この狭い自由の中で、何かないかと手を宙でバタバタと動かす。



「……ん、なんかある……？」



ふとズボンのポケットに感じた違和感、何かそこそこに重量のある平べったいものの感触。

右手で探りその正体を手に取り形を確かめる。

四角に棒が付いたような形、棒に付いた凹凸、もしや鍵だろうか。

急いで手錠を片方ずつなぞる、左右どちらにも手の甲の方に細い穴が空いている……と推測。

差し込んで右へと捻れば、心地よい音が二回部屋に響く。



「解けた!!」



端からみたら不恰好な手つきなんだろうけど、見えないんだから探り探りになってしまうのは仕方ないよね。

自由を得た両腕、これで忌々しい目隠しと足の拘束も外せるだろうか。



「……お、いけたいけた」



まるで謎解きをさせられてるみたいだ、謎といえば、QuizKnockの皆は今頃どうしてるだろうか。

今日は打ち合わせだと聞いてたのに、異変に気付いてくれてたりしないかな。

無性に泣きたくなった。

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