ナイトクルージング・・ Kei ＊ Ryosuke ・・

night 5 ページ6

スケジュール帳の金曜日の欄に、震える手で『アシスタント 代々木 9:00集合』と書き込む。



通常だったら営業日のはずの、来週の金曜から4日間。

なんの因果か、うちのお店は定休日となっていた。



相葉さんの弟さんがハワイで挙式するのに参列するからって、その連休全部休みにしちゃえ〜って。
いつものゆるい笑顔でお店のカレンダーに赤マル付けていたっけ。






ため息をついて、今日の休憩時間の会話を思い出す。








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A「無理だよ、私にそんな、」

涼『いやいや無理じゃないっしょ。むしろAしか無理だよ、』

A「そんな…プロのステージなんてやったことないもん…」

涼『学生の時とそんな変わんねーって。俺のやり方よく分かって動けるやつにやってほしいんだよ』






涼『ちゃんとお礼するから…メシも奢るから…！頼む！』






A「え、ほんと？」








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『メシも奢る』にホイホイ釣られてOKしてしまったけれど、目的なんてもちろんご飯なんかじゃなかった。
完全な下心。
なんでも良いから、また会いたい。それだけなんだ。







2年も経って、未練だらけの自分にちょっとだけ呆れる。







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『ごめんね』




思い出すのは最後に見た、涼介の悲しい瞳。




『Aは何も悪くない。悪いのは全部俺だから』





せめて少しでも話し合いができたら、なんて甘い考えは、その瞳の奥の決意にあっという間に打ち砕かれた。







『ごめんね。俺のことは、忘れて。』








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ため息をついて枕元の引き出しを開けて、久しぶりに、それを取り出してみる。


光を集めてきらきらと揺れるそのピアスは、もう片方しかなくなってしまった。







もう片方が見つかることは…たぶんもうないかな。









握りしめて、思わずこれをプレゼントされた日のことを思い出す。

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