ナイトクルージング・・ Kei ＊ Ryosuke ・・

night 29 ページ36

慧「リリちゃん！お疲れ、今着いた〜」


伊野尾さんが手を振りながらその女の子の所に向かっていった。
光沢のあるシルバーグレイのセットアップにノーカラーのシャツ。パンツの裾から細く白い足首が覗いていた。



「こないだ、すっごく楽しかった！ねぇ今度は裕翔くんも呼べない？」


ハーフにも見えるお人形さんのような顔立ちのその女の子は、慣れた感じで伊野尾さんの腕にその細い腕を絡ませた。


慧「裕翔ぉ？あいつくそ真面目だから来るかな…一応声かけとくよ」



裕翔、って中島裕翔かな。確か伊野尾さんと同じ事務所の、



「やったーありがと！レナがね、裕翔くんに会いたいって言ってたの」


慧「俺じゃないわけ？」


「違うよ！だって慧くんはリリの、」



…お？この2人ってそういう感じなの…？


これ以上壁際には寄れないっていうのに、なんとなく壁にぴったり張り付いてその様子を見つめる。
薄暗い会場の、間接照明も当たらないような端っこ。



「ね、慧くんこの後は…？」



慧「んーごめん、明日早いんだよねぇ」



「あ、慧くーん！」



わ、もう1人女子が増えた。少し離れた場所から、黒髪の綺麗な女の子が手を振っている。

こっちの子もかわいい…！



リリちゃん、と呼ばれたその女の子は、グロスを塗った綺麗な形の唇を尖らせた。



慧「ごめんね、また連絡する」



伊野尾さんはリリちゃんの頭にぽんぽん、と優しく触れて、黒髪ちゃんの元へ向かっていった。



その背中をすごい目で見つめているリリちゃん。美人が台無し。




「わー、またやってる伊野尾さん」




なんかすごいの見た…と思ってグラスを傾けていたら、すぐ近くでそんな声がして振り返る。今日お世話になった若い女性スタッフさん。



A「あ、あの…」


「ん？あー相澤さん！今日はお疲れ様でした！すごく可愛かったですよー！」


A「今日はありがとうございました。」


「いえいえこちらこそ。あ、相澤さんも気をつけてね、伊野尾さん」


A「え？」





女性スタッフさんはちら、と女の子と談笑している伊野尾さんの方を見た。





「こういう場所来ると、毎回違う女の子連れて帰っちゃうの。その時その時でお気に入りが違うみたい」


A「え…！」


「相澤さん、可愛いから気を付けた方が良いですよぉ、あ、これ内緒にしててくださいね」






ニコニコと愛想の良い女性スタッフさんは、口元に手を当てて笑いながら去っていった。

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