ナイトクルージング・・ Kei ＊ Ryosuke ・・

night 23 ページ30

伊野尾さんと手を繋いで、センターステージに続く花道を歩く。



映画館、テーマパーク、それから2人きりの旅行。


涼介とのデートはたくさんしてきたけど、結局、
夢に見ていた日は、来ることはなかった。



ステージの上、隣を歩く伊野尾さんの横顔を見つめる。彼もすぐそれに気が付いて、私の目を見て優しく微笑んだ。







…涼介とは、ずっと一緒にいられるって思ってた。どんなことがあっても。






笑顔浮かべてステージを歩きながら、なんだか急に胸の奥に切なさが溢れてきた。





このステージももう少しで終わり。
メインのステージからまっすぐ伸びた花道を歩いてセンターステージまで着いたら、
伊野尾さんがポケットからあの小箱を取り出して、この物語はハッピーエンドだ。




まばゆいスポットライトの下、今だけのキラキラの世界。
現実では叶わなかったけれど、今だけは幸せを手にした女の子になりきってもいいかな？







.






そんなことを考えながら花道を歩いていたその時だった。



慣れないピンヒール。
きっかけは分からない。
だけど気が付いたらかくん、と足首が回って、






A「あ、」





しまった、と思った時にはもう遅い。
視界がぐるりと揺れて、頭の中が真っ白になる。









転んじゃう…！









大勢の観客の前。

ステージのど真ん中。

だけどどうすることもできなくて、身体中の血の気が一瞬で引いていくのを感じた。

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