ナイトクルージング・・ Kei ＊ Ryosuke ・・

night 14 ページ19

時計を見る。涼介に渡されたスケジュールを見る。さっきからずっとこれを繰り返している。



…予定では、とっくに打ち合わせが始まっている時間。
なのに、相手役のアイドルの女の子がなかなか来ないのだ。







ミーティングルームの外ではさっきからバタバタと誰かの足音。それに話し声。
涼介も、時計を見たり立ち上がったり座ったり、なんとなく落ち着かない。




伊野尾さんは、最初は机に座ってスケジュールに目を通していたけれど、いつの間にかさっきみたいにハットを顔に被せて、部屋の隅のソファに寝転がっていた。

高木さんは電話してくる、って部屋を出て行ってから、しばらく戻ってこない。






A「…こういうことって、よくあるの？」


沈黙に耐えかねて涼介に聞いたら、彼はため息をついて首を横に振った。






「山田…！ちょっといいか、」


涼「はい、」



血相を変えたスタッフさんがドアを開けて涼介を呼ぶ。








.








「結論から言うと、相手役の折原は今日、来られなくなりました」







このステージに関わる全てのスタッフさんが集められて始まった緊急ミーティングは、ディレクターさんのその一言で一気に重苦しい雰囲気に包まれた。






雄「理由は？」


「所属事務所に確認をとりましたが、体調不良、ということで…」





そういえば、相手役のアイドルの女の子…折原ちゃんってもともと体が弱いんだっけ？

歌番組やイベントを体調不良でキャンセルした、っていうニュース、何度か見たことあったかも。

テレビの中で見た、彼女の華奢な体を思い出していたら、高木さんが大きなため息をついた。







雄「体調不良、という名のドタキャンね。いい加減にしろっつーの、」


涼「…どういうことですか？」



雄「体調不良っていうのは表向き。実際は超ワガママ女なんだよ。気分乗らないとすぐにこれ」


涼「え、」





えぇ！






雄「業界では有名な話っすよ。今は若くて人気あるからいいけど、」


慧「まぁ来年には消えてるだろうね、」





いつの間にか起き上がっていた伊野尾さんが、半分くらいしか開いてない目をこすりながら冷静に呟いた。







「そんなわけで、代役を立てなければならないんですが、」


「無理ですよ…今日のステージの最後のドレスは、彼女に合わせて縫ってあるんです…！」






衣装さんが悲痛な面持ちで呟く。





…なんか、大変なことになってきちゃったみたい…。

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