スローモーション4・・kei.i・・

138 ページ10

慧「俺ね、」




ゆっくりと話し出す慧くん。胸ごしに、直接声が響いてくる。



慧「これから忙しくなるから、2学期はほとんど来れないと思う。ここに…」





A「うん……」







慧「あのね、…ひとつ、わがまま言ってもいい？」








わがまま？








彼の片手が私の頬に触れて、視線がぶつかる。
途端に不安で暴れ出す心臓。





次に言われる一言が怖い。
覚悟なんて何もできていない。



そんな私を慧くんは悲しそうに見つめるから、余計に怖くなってしまう。








A「な……に？」





掠れた声でやっと返す。不安で手足が小さく震える。





慧「たぶん俺、これからも一緒にいたら、Aに寂しい思いいっぱいさせる。悲しい思いもいっぱいさせる。きっと、今まで以上に…」





A「……………」





慧「側にいてほしいときに、いてあげられないし、これまで以上に誰にも、見つかっちゃいけない、立場になるし…」





そこまで言ったら慧くんの瞳が悲しく揺れて、頬に当てられていた手がするりと落ちていく。









あぁ、やっぱりなぁ。
私は、いちゃいけない。
慧くんのこれからに、足手まといになるだけだから…




そう思ったら涙がぽろぽろ流れて止まらなかったけど、もうどうしようもない。









そんな私を慧くんは、もう一度強く、抱き締めた。
苦しいくらいに感じる体温。









慧「でもね俺Aと一緒に、いたいの」





思わず顔を上げる。









慧「辛い思いいっぱいさせるってわかってるけど、どうしても、離したくない、ごめん」









慧くんの目が、ほんの少し赤くなっているように見えた。

139→←137

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す