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「あれ？髪切った？」
ある日の勤務中、カウンター越しに声を掛けられて顔を上げたら、裕翔くんがコーヒーをカップに注ぎながら笑っていた。宿泊客ならいつでも無料で飲めるコーヒー。私が豆を買い出しにいってるやつ。
A「うん。何か持て余しちゃって…切り過ぎたかな」
裕翔「いいじゃん。似合ってるよ」
A「ありがとう」
裕翔「Aちゃん来たばっかりの時は都会のお姉さんって感じがしたけど、最近いい感じに馴染んでるよね、この街に」
A「あは、かなりテキトーになってきたかも。カジュアルすぎるよね」
裕翔「違う、そうじゃなくて。今の感じの方が似合ってるなって思っただけ。Aちゃんらしくてさ」
裕翔くんは、甘い顔に似合わず割と思ったことをはっきり言う人だ。
でも決して嫌味な感じはなくて、たぶん心から思ったことを言ってくれただけなんだろうなって思った。
A「ありがとう。私も今の自分の感じはけっこう好きかも」
だから私も素直に思ったことを言った。裕翔くんは嬉しそうに小さく笑って「でしょ」とだけ言ってテーブルに戻っていった。
東京にいた頃、あんなに熱心にネイルしたり髪を巻いたりきれいな色のスカートをはいたりしていたのに、ここに来たらそういう物への興味が一切なくなってしまった。
それでやっと気付いた。私はもともとそういうものが特別好きだったわけじゃなかったってこと。
いわゆる『理想の女』みたいな存在になりたかったんだと思う。そういう女の子らしいことをするといつもあの人が褒めてくれたので、最後の方は義務感にかられてやっていたような気がする。
ずっと長く伸ばしていた髪を、肩につくかつかないかくらいのボブにした。急に幼くなった感じがするけど、あの頃の背伸びしてた自分に比べたらずっといいと自分でも思う。
その時、カランコロンと入口のベルが鳴った。
裕翔「お、来たな」
慧「お疲れぃ！」
仕事終わりの慧くんが宿のラウンジに入ってきた。裕翔くんの隣に荷物を置いて、ちらりとこちらに視線を向けると小さく手を振ってくれた。
私も片手を振ってそれに応える。
その瞬間、心がぽわんと満たされていく感じがした。
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ゐ(プロフ) - スロモからあっという間に時が経ちましたが、今年もちゃみさんの大ファンです！ビタシュガ続きの展開も楽しみにしています！ (2022年1月3日 0時) (
レス) @page47 id: e880b33f36 (このIDを非表示/違反報告)
青空(プロフ) - やっと、慧くんがいい感じですね。 (2022年1月1日 20時) (レス) @page47 id: a1f6031022 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ちゃみ
| 作成日時：2021年5月1日 15時
