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なんかいいな、今の。
ガヤガヤと賑やかなラウンジの中で、ほんの一瞬繋がれた感じとか、2人にしか分からないくらいのさりげない感じとか。
今の私には、これくらいがちょうどいい。これくらいで満たされて、ぽわぽわとあったかい幸せの中に浸っていたいな。
「あの、すみません、ちょっとお聞きしたいんですが…」
A「あ、はい、どうしました?」
ぽわぽわしてたらお客さんに声を掛けられた。バックパッカーのお兄さんだ。ここら辺でおいしいお店ありませんか?と聞かれたので、手作りのマップを渡しておすすめのお店をお伝えした。
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その日は週末なこともあってか宿は満室で、ラウンジもガヤガヤと賑やかだった。
ちょこちょこと今みたいな感じでお客様の対応に追われて、全然慧くん達のところには行けなかった。
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それはちょうど、その日最後のお客さんのチェックイン業務を済ませ、ほっとしてカウンターに戻ってきた時だった。
まだまだ賑やかなラウンジ。向こう側のテーブルで慧くんと裕翔くんが楽しそうにおしゃべりしてる。隣のテーブルでは海外からやってきたゲストとさっきのバックパッカーのお兄さんが盛り上がっている。
宿の雰囲気をさりげなく作り上げるのも、この仕事の大事な役目なのだと最近になって分かってきた。よしよし、今夜も良い感じだ、と満足気に思っていた時、不意にドアベルが鳴った。
A「あ、いらっしゃいま…」
にこりと笑顔を作って挨拶をしかけて、その人と目があった瞬間、心臓が凍りついた。
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「やっと見つけた。探したよ」
あぁ、やめて、入ってこないで。
何か言葉にしようと思えば思うほど、喉がぎゅっと苦しくなって声も出ない。
その人はぐいぐいとラウンジの中に入ってきて、カウンターの目の前までやってきた。
慧くんが、ちらりと振り返ってこちらを見た。
「どーしたのそのカッコ。金ないの?」
A「……、」
どうしてこんな人のことをあんなに好きだったんだろう?自分の見る目のなさに絶望する。
馬鹿にするような薄ら笑いこちらに向けているその人は、
数ヶ月前、完全に縁を切ったと思っていた元婚約者で…、
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ゐ(プロフ) - スロモからあっという間に時が経ちましたが、今年もちゃみさんの大ファンです!ビタシュガ続きの展開も楽しみにしています! (2022年1月3日 0時) (レス) @page47 id: e880b33f36 (このIDを非表示/違反報告)
青空(プロフ) - やっと、慧くんがいい感じですね。 (2022年1月1日 20時) (レス) @page47 id: a1f6031022 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ちゃみ | 作成日時:2021年5月1日 15時