#33 ページ34
慧くんの元カノに突き飛ばされてできた傷は、ほんの数日で良くなったのだけれど、
私の肘の絆創膏を見かけるたびに眉をひそめる彼が「お詫びをしたいけど何がいい？」と毎日のように聞いてくるので、お言葉に甘えることにした。
このところぐっと冷え込んできたというのに、手持ちの洋服の中に真冬用のコートもマフラーもニットも何も入っていないことに気付いてしまった。
そういえば嵩張るからって勢い余って全部捨てたような。
あの都心のマンションを追い出された頃の記憶はもはや曖昧なのだけど、持ってないっていうことは捨てちゃったってことなんだろう。
.
慧「ってか、全荷物あれだけだったんだ。Aちゃんはあれだね、ミニマリストだね」
A「必要なものまで捨てちゃってたらミニマリスト成り立ってないけどね」
慧「あはは！いーじゃん羨ましいよ。俺捨てらんない性格だから物が増える一方でさ」
ハンドルを握ったまま、慧くんが笑う。
交差点に入る少し手前で信号が黄色くなると、彼はゆっくりと丁寧に減速をしてから、前の車とだいぶ間隔をあけたところで止まった。
お詫びをしたいと言う慧くんのお言葉に甘えて、冬服を買うため郊外に最近できたばかりの大型ショッピングモールまで車で連れて行ってもらうことにした。
お給料が入ったとはいえそんなに余裕があるわけではないから、必要最低限の物しか買え無さそうだけど。
.
立体駐車場に入る手前でほんの少し渋滞していた。警備員のおじさんが外に立っている。
駐車場とモールを繋ぐ連絡通路をぞろぞろとたくさんの人が歩いているのが見えた。
A「うわぁ、めちゃ混んでる」
慧「できたばっかりだからねぇ。この辺何もないし」
A「ここだけ急にディズニーみたいになってるね」
慧「こら、田舎を馬鹿にしたな」
A「あははごめん、してない」
やっと入れた駐車場の中で、端っこの絶妙に停めにくそうな柱の影の位置にバックモニターも見ずにさらりと駐車していたのでちょっときゅんとしてしまった。
運転うまいな。ちょっと意外。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 420人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「Hey!Say!JUMP」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ゐ(プロフ) - スロモからあっという間に時が経ちましたが、今年もちゃみさんの大ファンです！ビタシュガ続きの展開も楽しみにしています！ (2022年1月3日 0時) (
レス) @page47 id: e880b33f36 (このIDを非表示/違反報告)
青空(プロフ) - やっと、慧くんがいい感じですね。 (2022年1月1日 20時) (レス) @page47 id: a1f6031022 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ちゃみ
| 作成日時：2021年5月1日 15時
