#37 ページ38
慧「着いたよ」
短い間、すとんと深く眠っていたみたいだ。はっと気付いて目を開けたら、フロントガラスの向こうにヘッドライトに照らされた柵が見えた。その向こうは森?どこか駐車場っぽいところにいるんだなというのは理解した。
A「んん、ここどこ?」
慧「へへ。ちょっとだけ外出れる?」
A「外?」
慧「1分でいいから!」
A「うわぁ、さむぅ」
ドアを開けたらぴゅうっと風が吹き込んできた。慧くんが笑いながらブランケットを私の肩に掛けてくれた。
.
慧「ほら見て」
A「わぁ…!」
車を降りてちょっとだけ歩いたら、木々が途切れたところからこの街の夜景が大きく広がっているのが見えた。
いつのまにか小高い山の上の展望台みたいなところに来ていたみたい。駐車場と、少し離れたところにトイレと自動販売機があるくらいで他には何もない。地元の人しか知らないような場所だった。私たちの他には誰もいない。
小さな街だと思っていたけど、こうやって高いところから見下ろすとこんなにたくさん光があるんだなって驚いた。
慧「けっこう綺麗でしょ」
A「すごい!」
空気が澄んでいるせいか、一つ一つの光がよく見える。決して派手さはないけれど、小粒の光がキラキラと揺らめいている光景はとても綺麗で、思わず見惚れた。
A「意外と明るいんだね」
慧「そうでしょ?東京ほど明るくはないだろうけどさ、これはこれでけっこういいよね」
A「慧くんは産まれてからずっとこの街にいるの?」
慧「そーだよ。高校とか大学の時仲良かったやつはみんな上京しちゃってさ、ちょっと寂しさはあるかな」
A「この街が好きなんだね」
慧「そうだね」
にこ、と笑ったら彼の目尻に皺がよった。夜風に当たって潤んだ瞳が穏やかに街を見下ろしている。やっぱりこの人は優しい人だなと思った。
その時、風がぴゅうと少し強めに背後から吹いてきた。
慧「さっむ!」
A「うぅ〜!」
ブランケットにくるまってぎゅっと縮こまる。
すると不意に風が止んだ。
慧「あ、俺ここサイズぴったり」
頭の上に慧くんの顎が乗った感触。風が吹いた瞬間、彼が私のすぐ後ろに移動してくれたみたいだった。
ポケットに手を突っ込んだまま、顎だけ私の頭の上に乗せている。猫背のくせに実は背高いんだよなぁ。どこをどう切り取ってもいちいちずるい人。
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ゐ(プロフ) - スロモからあっという間に時が経ちましたが、今年もちゃみさんの大ファンです!ビタシュガ続きの展開も楽しみにしています! (2022年1月3日 0時) (レス) @page47 id: e880b33f36 (このIDを非表示/違反報告)
青空(プロフ) - やっと、慧くんがいい感じですね。 (2022年1月1日 20時) (レス) @page47 id: a1f6031022 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ちゃみ | 作成日時:2021年5月1日 15時