桜雨、恋の音。2・・Kei・・

epilogue kei ページ46

「え、南高出身？俺もだよ！」


A「わ、ほんと？」


「えー、知らなかった、美術部にこんな可愛い子がいたなんて」


A「えぇ、いいよお世辞は…」


「ほーんとだって」




.




夜桜の下、ざわざわと賑やかな宴会のど真ん中にいたのに、
向こうの方からそんな会話が耳に入ってきて、思わずそっちを見た。



2回目の新入生歓迎会。今年は迎える側に回ったわけだけど。


さっきから何あれ。
あいつずーっとAにくっついてない？



.


A「あれ？山田くんて現役生？」


「違う違う、俺新入生よ、一浪しててさ」


A「そっか！じゃぁ学年一緒だったんだね」




『山田くん』と呼ばれている、やたらと甘いルックスのその男が、言いながら座り直してずい、とAに近付いた。
おいコラ、近いっつーの。



.



留学から帰ってきたAが、一番変わったなぁって思ったのはこういうところ。
前はあまり人と関わるのが好きそうじゃなかったけど、

海の向こうで1人で生活した経験が自信になったのか、彼女は前よりずっと明るく、男女問わず積極的に人と関わるようになった。


それはすごく良いことだと思うんだけど、
今まであまり人と関わってこなかった分あんまり免疫のないAのガードはけっこうゆるゆるで…



.



「伊野尾先輩ってもしかして、音楽部棟にある横断幕の人ですか？コンクールの」


慧「ほぇ？あー…うん、あれまだあんのか」


「えー！すごい！」



目の前にいるピアノ科の新入生の集団がキャピキャピと沸いた。


慧「いやいや、あんなん公開処刑だから。奨励賞とかほんとショボ」


「えぇっ？だって全日本ですよね？」


「1年の時に出てもう賞取ってるのがすごいよねぇ！」



慧「や、ほんと…今年はもうちょい頑張るわ…」


女子たちに持ち上げられて悪い気はしない。
のに、全然会話に集中できない俺。

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