桜雨、恋の音。2・・Kei・・

#61 ページ14

どうして今まで、考えなかったんだろうな。
こんなに、優しくて真っ直ぐで、素敵な人だもん。
恋人がいるのなんて、当たり前だ。





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慧「なんかリクエストある？」


A「うーん、慧の気分に合わせるよ」


慧「おっけ、じゃぁ伊野尾慧の今の気分、即興で弾きまーす」




そう言って部屋の奥に消えるとすぐに、なんだか弾むような楽しげなメロディが聴こえてきた。






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ふふ、今日はすごいな、パレードが始まりそうな曲。ところどころおどけたような旋律が入っている。

今日の曲は、いろんな色で描きたい。華やかで、鮮やかな感じ…


パレットに目に付いた色を次々と出していく。




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あの日、慧の部屋を訪れて全てを知ってしまってから、今まで通りに彼と接していけるか不安もあったけど、

会って顔を合わせたら、当たり前だけどそこにいるのはいつも通りの慧だった。



私の中でいつまで経っても、慧に恋人がいるという事実が、実感を伴わないままでいた。

きっと側に彼女の姿が見えないからなんだと思う。






だからかな…







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慧「はー、ごめんちょっとはしゃぎすぎて指疲れた」


A「えー！続けてよぅ」


慧「ふは、ごめんごめんやるやる〜」





窓からこちらに向けられる笑顔を見る度、


前よりどんどん、彼に対する『好き』が大きくなってくの。






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再び聴こえてきたメロディーに耳を傾けながら、キャンバスに最初の1色を乗せていく。








いつもの昼下がりは、どこかほの甘く切ない気持ちと一緒に、過ぎていく…

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