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あの後泣き腫らした目で倉庫から出ると、待ち構えていたお局が遅いわよとかなんとか、ぶつぶつ言いながら近付いてきた。
だけど私の顔を見て何か勘違いをしたらしく、その日の午後やたらと優しかった。
突然デスクにお菓子を置いて行ってくれたりして。そんで年休消化全然できてないのあなただけだから時間休で帰ったら?たまには息抜きも必要よ。だって。
女の人ってよくわかんない。いや、私も女の人だけど。
.
そんなこんなでいつもより2時間早く帰ってきたいつもの駅に、当然慧の姿はなかった。
A「ただいまー…、」
午後の光が淡く差し込む部屋の中。
エアコンを付けずに開け放たれた窓から、柔らかい風が入ってきてカーテンを揺らした。
A「あれ…ふふ。」
部屋に入るなり目に飛び込んできた光景に思わず和む。
ソファの上にいたのは、お腹の上に開いたまんまの本を伏せて、うたた寝をしている彼だった。
本の裏表紙に付いたバーコードシールに、『平成図書館』の文字が見える。
図書館行ってきたんだ。何読んでたのかな?
A「異彩を放つ世界の名建築100…」
彼がお腹に乗せていた本の背表紙を思わず読んでしまった。
よく見るとテーブルの上にも何冊か無造作に重ねて置いてある。
『建物できるまで図鑑』、『死ぬまでに見ておくべき100の建築』…
こういうのが好きなんだ。知らなかった。
瞬間、妙なドキドキ感におそわれた。
唇が薄く開いたまんま、すやすやと気持ち良さそうに眠る顔を見つめる。
何も知らないんだなぁ、私。慧のこと…
ふと、重ねてあった1番下の本に、付箋が挟んであるのが目に入った。
なんだろ?
興味本位で手に取る。
目に入ったのは、『よく当たる!夢占い辞典』の文字。
A「ふ…ほんとに借りてる」
思わず小さく吹き出して付箋のページをめくる。
あ…溺れる夢、
慧「あれ…A…?」
A「あ、おはよ」
慧「早い…なんで?」
言いながら嬉しそうに笑った彼は、目を擦りながら起き上がり、ラグマットの上に胡座をかいた。
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ひな(プロフ) - ちゃみさん初めまして。一昨日ちゃみさんの作品に出逢い、面白くてハマって全作品一気読みしました!これからも楽しみにしてます。 (2018年9月23日 22時) (レス) id: 800dd62f43 (このIDを非表示/違反報告)
ぶどう(プロフ) - このお話にとても感情移入してしまい慧くんとの別れに涙が出て止まりませんでした。私が本当に主人公ちゃんになったかのように悲しくて、寂しくて、こんなにお話に感情を揺さぶられたのは初めてで自分でもびっくりしました。人を号泣させられる作者さん、尊敬してます! (2018年9月22日 23時) (レス) id: 548f1d5b70 (このIDを非表示/違反報告)
ゆずごしょう(プロフ) - 移行おめでとうございます!慧くんとの別れが余りにも悲しくて、泣いてしまいました。また慧くんと会えるのか、楽しみです! (2018年9月15日 0時) (レス) id: 5f95aa5fdf (このIDを非表示/違反報告)
不眠症の羊(プロフ) - 移行おめでとうございます。ご無沙汰羊です。ああ、うちの玄関前にも伊野尾さん来てくれないかしら…。と妄想しつつ、続きを楽しみに待ってます。追伸、ボードの方に例のURL貼っときました。よろしければ使ってみてください。 (2018年8月25日 13時) (レス) id: 5d3f6da0fa (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ちゃみ | 作成日時:2018年8月20日 15時