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和「…昨日さ、」
ぽつり、小さく耳元で聞こえる声。
和「うちのが…勝手に行ったみたいで…ごめん」
和「追いかけたんだけど、間に合わなくてさ」
A「もうやめよ…」
いつのまにか足元に落っことした、コーヒーフィルターの最後の一袋を見つめながら、振り絞るようにそう言った。
A「もっと前にやめるべきだった…、和くんは…、」
人ってどうしてそういう時に、一番幸せで楽しかった2人の思い出ばっかり頭に浮かんでしまうんだろうな。
A「守るべきものをちゃんと大切にしてあげて…!」
いつかの、初めてキスした帰り道。
少し酔っ払って、ふわふわと歩く私を、
危ねぇな酔っ払い、って笑いながら繋いでくれたあなたの手。
あの時の私は、恋なんてまだよく分かってない子どもで、
でもあなたといることで、自分も大人の仲間入りをしたんだって甘っちょろい勘違いをしていた。
.
息苦しくなるくらいの沈黙を、彼のふ、という笑みの音が破った。
和「…なっさけねぇなー俺」
その時一瞬だけ、彼の腕が震えた。
和「すっげー自分勝手なこと言うけどさ、
…俺にはさ、…必要だったんだよ、お前が」
…!
そんな言葉、ずっと欲しかった。
A「私だってそうだったよ…!」
やっぱり最後まで、ずるい人だなぁ。
和「今までの時間を…返してやれなくてごめん」
A「…!」
和「絶対幸せになれよ」
.
するりと解かれた腕。
すたすたと足音が遠ざかっていく。
瞬間、リノリウムの床の上に、ぽたりとこぼれた一雫。
今だけ、ちょっとだけ泣いたら、前に進もう。
ねぇ、間違いだらけの恋だったけど、好きの気持ちに間違いはなかった。
なかったんだよ、和くん。
しゃがみ込んで、コーヒーフィルターの袋を握りしめたまんまで、
涙が引くまでこっそりと、声をころして泣いた。
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ひな(プロフ) - ちゃみさん初めまして。一昨日ちゃみさんの作品に出逢い、面白くてハマって全作品一気読みしました!これからも楽しみにしてます。 (2018年9月23日 22時) (レス) id: 800dd62f43 (このIDを非表示/違反報告)
ぶどう(プロフ) - このお話にとても感情移入してしまい慧くんとの別れに涙が出て止まりませんでした。私が本当に主人公ちゃんになったかのように悲しくて、寂しくて、こんなにお話に感情を揺さぶられたのは初めてで自分でもびっくりしました。人を号泣させられる作者さん、尊敬してます! (2018年9月22日 23時) (レス) id: 548f1d5b70 (このIDを非表示/違反報告)
ゆずごしょう(プロフ) - 移行おめでとうございます!慧くんとの別れが余りにも悲しくて、泣いてしまいました。また慧くんと会えるのか、楽しみです! (2018年9月15日 0時) (レス) id: 5f95aa5fdf (このIDを非表示/違反報告)
不眠症の羊(プロフ) - 移行おめでとうございます。ご無沙汰羊です。ああ、うちの玄関前にも伊野尾さん来てくれないかしら…。と妄想しつつ、続きを楽しみに待ってます。追伸、ボードの方に例のURL貼っときました。よろしければ使ってみてください。 (2018年8月25日 13時) (レス) id: 5d3f6da0fa (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ちゃみ | 作成日時:2018年8月20日 15時