約束なんて、とっくの昔に忘れてた (★) ページ40
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はっと目を開けた時、私は水の中でもがいていた。
暗く冷たい水の中で、水分を含んだコートの袖がぐったりと重たく、体にまとわりついていく…
またこの夢…!
何かに掴もうと必死で手足を動かすも、それは虚しく水の泡を掴むだけで、
…どうしてあの時、あんなこと言っちゃったんだろう…
頭に浮かぶのは、いつだって優しく私の名前を呼んでくれる、大好きな彼の笑顔だった。
…ごめんね、けいちゃん、
こんなことになるなら、あの時もっと素直になれば良かった…、
全部私がいけない
私のせいだ…
徐々に遠くなる意識。
もう手足をジタバタと動かす力も残っていない。
だけど諦めて体の力を抜こうとしたその時、
信じられないくらい強い力が、私を水の底から押し上げた。
…!
だれ…?
真っ暗だった水の中に一筋の光が差し込む。
体はぐいぐいと持ち上げられて、
あと少し、あと少しでそこまで辿り着く…!
最後に目に入ったのは、青いジャンパーの袖
あれは…、いつも、けいちゃんが着ていた…
.
A「はぁっ…!」
岸に辿り着いた私の腕を、そこにいた誰かが掴んで引き上げた。
「大丈夫か!」
A「げほっ、…!」
「おい、もう1人いるぞ!」
「引き上げろ!」
ごろりと倒れ込んだ地面から、ぱりぱりと乾いた草の匂い。
向こうの方に2つ、私とけいちゃんのランドセルが転がっているのが見えた。
A「うぇ…、」
いつのまにかたくさん飲んでしまっていた水を吐き出す。
うまく息を吸えない。
寒い、苦しい…!
「おい、しっかりしろ!」
「こっちの子の方がひどいぞ」
「救急車!」
頭の上で鳴り響く大人たちの声が、頭にズキズキと響いてくる。
倒れ込んだ地面の上で、僅かに目を開けた瞬間に飛び込んできたのは、
A「けいちゃん…!」
真っ白な顔で目を瞑ったまま、私の隣に寝転んで動かないけいちゃんの姿____________
A「けいちゃ…けほっ、」
必死で名前を呼ぶ。
だけどけいちゃんはぴくりとも動かない。
A「う…!けいちゃん…!」
伸ばした手でどうにか触れた頰は、はっとするほどに冷たい____________
けいちゃん、起きて、
お願い…!
けいちゃん…!
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ひな(プロフ) - ちゃみさん初めまして。一昨日ちゃみさんの作品に出逢い、面白くてハマって全作品一気読みしました!これからも楽しみにしてます。 (2018年9月23日 22時) (レス) id: 800dd62f43 (このIDを非表示/違反報告)
ぶどう(プロフ) - このお話にとても感情移入してしまい慧くんとの別れに涙が出て止まりませんでした。私が本当に主人公ちゃんになったかのように悲しくて、寂しくて、こんなにお話に感情を揺さぶられたのは初めてで自分でもびっくりしました。人を号泣させられる作者さん、尊敬してます! (2018年9月22日 23時) (レス) id: 548f1d5b70 (このIDを非表示/違反報告)
ゆずごしょう(プロフ) - 移行おめでとうございます!慧くんとの別れが余りにも悲しくて、泣いてしまいました。また慧くんと会えるのか、楽しみです! (2018年9月15日 0時) (レス) id: 5f95aa5fdf (このIDを非表示/違反報告)
不眠症の羊(プロフ) - 移行おめでとうございます。ご無沙汰羊です。ああ、うちの玄関前にも伊野尾さん来てくれないかしら…。と妄想しつつ、続きを楽しみに待ってます。追伸、ボードの方に例のURL貼っときました。よろしければ使ってみてください。 (2018年8月25日 13時) (レス) id: 5d3f6da0fa (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ちゃみ | 作成日時:2018年8月20日 15時