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「A…!会いたかった…!」
え、知り合い……!?
何が何だか分からずに彼の腕の中で固まった。
私の名前を呼ぶ声の最後の方は、涙で滲んで掠れているようにさえ聞こえた。
なんだっけ。この人今まで会ったことあったっけ。学生時代の合コンとか?いや、こんなイケメンと合コンしたら絶対覚えてるよな。
A「あの…」
「ん…?」
私を愛おしそうに抱きしめたままの彼におそるおそる聞いてみる。
A「すみません、どちら様ですか…?」
「…え?俺だよ、けいだよ!」
A「…?」
慧「覚えてないの…?」
けい、と名乗った彼は私の両肩に手を置いて、ずい、と顔を近付けてきた。
不覚にも一瞬、どきんとしてしまう。
少し眠たそうに垂れた瞳は、濡れたようにきらきらと光って綺麗。でもやっぱり、私はこの人を知らない。
A「あの、…なんか人違いをしてるんじゃ、」
慧「は!俺がAを間違うわけねぇじゃん!」
あ、怒った。っていうか、すねた。
慧「んだよぉ、忘れてんじゃんか…」
がっくりと肩を落とした彼は、私から体を離して、「あ、でも」と何かを思い付いた様子で振り返る。
慧「いいや、思い出さなくてもいいんだった、とりあえず、」
A「はぁ…?」
なんだかとんでもないのに引っかかってる気がしてきた。イケメンの詐欺師だったらどうしよう。あるかもな。東京こわい。
A「あの、じゃぁ、私はこれで…」
これ以上は関わらない方が良い。
とりあえずさっさと家の中に入ってしまおう。
それでもこの人帰らなかったら警察に電話して、
慧「あ、待って!」
A「ひっ、」
閉めかけたドアを彼の綺麗な手が止めた。
思わず小さな悲鳴が出た次の瞬間、
フラ、とその彼…慧は体のバランスを崩して、どさ、と私の体にもたれるように倒れた。
A「え?ちょっと!えぇ?大丈夫ですか?」
なんて細いのこの人!
こんな時なのに、その細さと軽さに妙な感激を覚えていたら、耳元で小さな小さな声がした。
A「え?何?何ですか?」
慧「腹、減った…無理ぃ……」
A「はぁ!?」
.
満月の夜。
ひとりぼっちのはずだった夜。
不思議な彼との、不思議な日々が静かに、始まろうとしていた。
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雨(プロフ) - 頑張ってください!更新楽しみにしてます!できればパスワード教えてください! (2018年7月23日 13時) (レス) id: cd068f5c5f (このIDを非表示/違反報告)
涼宮 - とても面白いです!パスワードを教えてくれませんか? (2018年7月21日 21時) (レス) id: 69077a28f6 (このIDを非表示/違反報告)
かほ(プロフ) - 好きです!伊野尾さんののほほん感がよく描かれていて、リスペクト!尊敬してます。ちゃみさん、これからもゆっくりマイペースで大丈夫ですので、変わらず更新を続けて下さい!ずっと、応援します! (2018年7月18日 20時) (レス) id: 0cc6cf21ff (このIDを非表示/違反報告)
かんな(プロフ) - ちゃみさんの描く伊野尾くん大好きです、、!また更新たのしみにしてます!! (2018年7月18日 0時) (レス) id: 6d46aa0005 (このIDを非表示/違反報告)
希都 - ちゃみさん!私、こう言う切ない系のお話大好きなので、楽しく読ませて頂いてます!更新頑張って下さい! (2018年7月5日 21時) (レス) id: 6465792da0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ちゃみ | 作成日時:2018年6月21日 20時