21話 ページ21
「ちゃんとした実力あるんだからさ、サボらずに頑張ろうよ！ほら！塩キャラメル！」
私が塩キャラメルを差し出すと目を輝かせる国見。
「…後半になって力を出してくるのが国見のやり方なんだよね。知ってるよ。でも、サボるの良くない。
ちゃんと練習しよ。」
国見は塩キャラメルを頬張りながらこちらを見る。
「…お前、ほんとに頑張る事好きだよな。」
…あ、これじゃ、中学の時と同じ…
そう思ったとき、頭に大きな手が乗せられる。
「へ、…」
「お前が帰ってきたみたいで安心した。
塩キャラメルにめんじて練習はサボらない。…多分。」
そう言って国見は頭をわしゃわしゃとして練習へ戻った。
…まじで頭をわしゃわしゃすんのやめてほしい。
「へぇ、あの国見を…さすがだねぇ」
ニヤニヤする花巻さん。
「花巻さんも練習行ってください！」
「へーへー」
私が、帰ってきたみたい、か。
…多分国見も国見なりに心配してくれてたんだろうなぁ…
あの無気力が…なんか感動。
そんなことを思いながら、ぼけぇーっとしていると、大きな声。
「ちょっ！Aちゃん、！危ない！」
「三浦！！」
「へ？」
顔を上げると飛んでくるバレーボール。
ここからなら、行けるかも。
私は両腕を組み、腰を少し落とす。
そして、落ちてきたボールを上げる。
幸いなことに、そのボールの勢いはあまり強くなくて、女子の私でも上げられた。
ボールはきれいなカーブをえがき、床に落ちた。
静まり返る体育館。
「…え、あの、どうしました？」
「Aちゃん…」
「はい？」
「やっぱりさ、君、バレー部おいで？」
え？
「あんなにきれいなレシーブ、とっさの判断でよくできたよ…！さすが！！ね、おいで！」
そう言って及川さんは私のところに歩いてきて、肩をつかむ。
「え、あの、その、」
「Aちゃん、ボール上げてるとき、どうだった？」
どうだったって…
…すっと上がる感じ、あれは、はっきり言って、
「気持ちよかった、です…」
及川さんはニッコリと笑い、
「じゃあ決まりでしょ！！」
という。
どれだけ過去が恐くても、私はバレーが好きなんだ。
選手として、プレーすることはできない。
でも、選手を支えることは、私にもできるんじゃないか…？
そして、及川さん、この人は、きっと私を裏切らない。
誰よりも努力を知ってる人だから。
…うん、決めた。
「私、バレー部入ります。」
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作者名：ねお | 作成日時：2022年4月29日 19時
