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電話が切れてから数分後。
恐る恐るといった感じで玄関から姿を現した彼女は、未だに目の前に俺がいることが信じられないとでも言いたげな瞳でこちらを見上げた。
「ほんまに急にごめんな。」
「…何で私の番号や家を知ってたんですか？」
「俺はお前の元担任やぞ。」
「わぁ、職権乱用だ。」
もっと、ギクシャクするかと思っていた。
でも実際は、俺達が『教師』と『生徒』だったあの頃のように本当に自然で。
もうこの子は俺の事などどうでもよくなってしまったのでは、なんて考えが頭をよぎった。
「それで、どうして？」
『どうして今更、こんな時間に会いに来たのか』
短い言葉にはそれだけの意味が含まれているとすぐに分かった。
「……あのな、どうしてもAに伝えたいことがあって。」
そう口にして、思い出すのは彼女が告白してくれたあの日。
頭をあげて俺に背を向けるまでの一瞬。
その時見えたAの涙は世界一綺麗で。
その涙が、そして別れ際の泣くのを堪えて無理して笑っていたあの笑顔が、どうしても頭から離れなかった。
あの時Aが言った、
「鬱先生なんかよりいい男を捕まえる」
という言葉を何度も思い出し、彼女が男と歩いている場面を想像しては胸が苦しくなり、新年度に向けてやる事はたくさんあるはずなのに、なんとなく上の空になってしまう。
そんな日々が続いて、俺は否が応でも自覚した。
俺は、とっくにAのことが好きだったのだ。
だけど、ただ怖かった。
俺が触れることで、傷付けてしまうのではないかと思った。
純粋無垢で汚れを知らない彼女のことを。
本当はいつもAが愛しかった。
教壇から彼女の机との距離が寂しかった。
なのに俺は意気地なしで。
彼女だってきっと怖かったはずなのに、勇気を出して告白してくれたのだ。
それなのに。
全部全部、Aに正直に伝えたい。
そして『ごめんな』と『ありがとう』をまず言いたい。
ずっと、そう思っていた。
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でふぉ - すごく好きです。好きな作者さんばかりで、もっと早く読めばよかったと悔やんでおります。皆さん口調に違和感がなくて、入り込みやすくて好きです。ドキドキしたり、涙腺が少し潤んだりして、とても面白かったです。ありがとうございます。長文失礼しました。 (2019年8月22日 17時) (
レス) id: edb0d1df06 (このIDを非表示/違反報告)
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