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8話 ページ9

「っ、はぁ〜!!!」

口元までお湯につけ、

ぶくぶくと泡を吐き出す。

……まふまふさんにそのまま帰ってくんな

って言われちゃったしなぁ。

って、もしかして帰ってくるなって、

もう帰ってこないで、ってこと?

思考が軽くネガティブに向くが、

どう思ったところで任務。仕方がない。

「お嬢ちゃん見ない顔だねぇ」

スーパー銭湯なので他にも利用客はいて。

人の良さそうなおばちゃんが、

シロにそう声をかけてきた。

「ちょっと仕事に空きが出まして。
少し体を休めよっかなって!」

「そうかいそうかい!
ここの湯はいつも適温で気持ちがいいよ!
また暇があったらおいで」

ニコニコと

人好きのする笑顔を絶やさない態度に、

シロは内心、これは見習おう、

と思って。

「本当に温かいですねぇ〜
…今度同僚とも来れたらいいんですけど。」

そんな考えても無い言葉を吐く。

「あら、来れないのかい?」

前線部隊なので。

とは言わない。

軍部だと言っていい顔はされないからだ。

「……ちょっと、
あんまりよく思われてないみたいで。」

これも事実だしね、

とシロは心の中で舌を出す。

「あらぁ〜!
それは大変だわねぇ。同性かしら?」

「いえ、男ばかりで。」

困ったように頬に手を当てて、

大袈裟な程に眉を下げるおばちゃん。

「そう…あなたこんなに美人なのにねぇ〜
……男の子は見知らぬ人に
自分の中にはいられるのを嫌うからねぇ〜
時間をかけて、親しくなっていきなさいな」

びしゃん!

とお湯の中から手でシロの肩を叩き。

「また縁があったら会いましょうね」

なんて言って上がっていった。

……おばちゃん って感じの人だなぁ。

シロはその背中を眺めながらしみじみと思って。

“自分の中にはいられるのを嫌うからねぇ”

その言葉を脳内で反芻する。

……そんなことはわかっている。

わけアリばかりだと、

配属前に聞いていたし、

配属の時に渡された同僚の資料の、

転属履歴は真っ白だったし、

従軍経歴は誰もが幼少から。

……それに。

国のために死ぬための部隊のヤツらが、

スネに傷がないわけないよなぁ……。

と。

ぶくぶくぶくぶく……

助けてやりたい、

とは思わない。

自分は女神にはなれないし、

誰かを救えるほどできた人間じゃない。

……でも。

せっかく同じ部隊なのに。

これじゃ結局いつも通りだからなぁ……。

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煮凝り - れもんさん» あ゛っ…!読み返してまで…ありがとうございます更新頑張りますね!! (2020年9月11日 22時) (レス) id: 070d398b9c (このIDを非表示/違反報告)
れもん(プロフ) - 煮凝りさん» 全然いいなのです〜!!今日また見返してほっこりしてますw!! (2020年9月11日 19時) (レス) id: e9c3d8ad5a (このIDを非表示/違反報告)
煮凝り - れもんさん» 返信遅くなってすみません…!ほっこりしていただけたなら嬉しい限りです!! (2020年9月10日 17時) (レス) id: 070d398b9c (このIDを非表示/違反報告)
れもん(プロフ) - やああああ、いい仲間〜!!心温まる〜!!! (2020年9月4日 20時) (レス) id: e9c3d8ad5a (このIDを非表示/違反報告)
煮凝り - ささささん» わぁぁ嬉しいです……!!頑張りますね!! (2020年9月3日 19時) (レス) id: d8b345149a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:目に煮凝りができた | 作成日時:2019年12月23日 14時

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