48話 ページ49
「……っ」
「……ありがとうございます」
少し動揺したセンラを見て、
シロは直ぐに笑顔を柔らかいものに変えた。
意図的と言うよりも無意識に。
そしてそのまま心底嬉しそうに礼を言う。
「正直自分でも迷ってたんです。
ホラ、皆さん初めは凄く冷たかったですし。
いえ、怒ってるとか、不満とかではなく。」
鼻を抑えたまま話すシロ。
相変わらず締まらないが、まぁいいか。
「だから、センラさんがああいってくれて、
私、なんだか嫌味みたいになってしまって、
すごく申し訳ないんですが……
嬉しかったんです。」
「は?」
先程よりも深く刻まれた笑顔に
センラはぽかんと口を開ける。
年齢が上な訳では無いが
基本余裕を感じさせる彼にしては、
この表情は非常に珍しい。
「私、仲間なんていたこと無かったから。
きっと、なんにも考えずに暴走してました。」
ただただ、レイリは正しいのだと。
天月は気にし過ぎだと。
レイリと天月を、何も考えず引き合わせていた。
きっと。
シロはそう言って少し困ったように笑った。
「だから、
天月さんは私にありがとうと言ったけれど、
私はセンラさんに伝えますね。
ありがとうございます」
「い、や、俺は」
「ふふ、天月さんもきっと分かってました。
だって、俺みんなに愛されてるって。
私だけに、ありがとうとは言いませんでした。
センラさんのことも、ちゃんと見てた。」
数時間前の天月の小っ恥ずかしいセリフが、
センラの脳内で反芻された。
かっ、と顔が熱くなる。
そんな所まで、考えては、いなかったけれど。
確かに天月はそう言った。
「…そうなんかなぁ」
自分の中で嫉妬と位置づけた感情の置き場が、
今更定まらなくなってセンラは呟いた。
「?違うんですか?」
「いや、俺は…君が全部持っていくんか、
って、そう思っただけで」
志麻のことも。
結局解決したのはこの少女。
あの日の感情が戻ってくる。
そばにいたのに。
俺は、救えなかったのに。
「いや、めちゃめちゃ優しいじゃないですか。
むしろどこに引け目があるんですか?
いや、だって、いや、えぇ?
センラさんって、
他人の感情に敏感だけど
自分のはてんでダメなんですか?!
どう考えてもあなた、
仲間のことが好きすぎるだけじゃないですか!」
面くらったシロは半ば叫ぶようにして言った。
まさか正気か、
とその顔にはありありと書かれている。
「だいっ…?!」
予想外のセリフに
センラの顔がさらに赤くなった。
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煮凝り - れもんさん» あ゛っ…!読み返してまで…ありがとうございます更新頑張りますね!! (2020年9月11日 22時) (レス) id: 070d398b9c (このIDを非表示/違反報告)
れもん(プロフ) - 煮凝りさん» 全然いいなのです〜!!今日また見返してほっこりしてますw!! (2020年9月11日 19時) (レス) id: e9c3d8ad5a (このIDを非表示/違反報告)
煮凝り - れもんさん» 返信遅くなってすみません…!ほっこりしていただけたなら嬉しい限りです!! (2020年9月10日 17時) (レス) id: 070d398b9c (このIDを非表示/違反報告)
れもん(プロフ) - やああああ、いい仲間〜!!心温まる〜!!! (2020年9月4日 20時) (レス) id: e9c3d8ad5a (このIDを非表示/違反報告)
煮凝り - ささささん» わぁぁ嬉しいです……!!頑張りますね!! (2020年9月3日 19時) (レス) id: d8b345149a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:目に煮凝りができた | 作成日時:2019年12月23日 14時