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47話 ページ48

「んぁ……?」

すっかり人気がなくなり、電気も消えた円卓で、
センラは目を覚ました。
時計の針は深夜を指していて、
あぁ、天月主催のよく分からない宴会で、
寝てしまったのかと考える。

「起こしてくれたらええやん……」

何回起こしても起きんかったんや!!
と志麻が居たら言われるだろうが、
当人であるセンラがそんなことを知る由もない。

「ベッド行こ」

机で寝たせいで身体が鳴る。
ついでにゆっくり伸びをすると、
センラは恐らくうらたあたりが
つけておいてくれたのだろう
豆電球を消して二階に。

「ゴプッ、」

長めの廊下に左右均等に振られた部屋。
唯一空いていたのは左の扉だったが、
今はシロが埋めている。
その扉の前で、
吐き戻すような咳き込みが聞こえた。

「?誰?」

廊下にはあかりがなくて顔が見えない。
尋常じゃなかった、
とセンラは焦り半分に声をかける。

「センラさん…?起きたんですか、ゴホ」

「?シロ?」

最近ようやっと聞きなれた女性の声帯。
先程とは異なって乾いた咳に、若干気持ちが緩む。

「ちょ、電気つけるよ」

「へ?」

いや、電気ないです、
とシロが言おうとした瞬間に、
センラの腕からバチバチと火花が散った。

「物理……」

電気ってそっちか!と笑うシロだが、
センラはそれどころではない。
シロの手は既に真っ赤、
床にも数滴血が垂れている。

「吐いたんか?!」

数日前険悪だったとはいえ、
喀血ともなれば話は別。
しかもセンラは一応今回の件、
これはシロの勝ちだと認めているので、
最早そこに躊躇いはない。

「へ?」

「なんで、いつ」

毒でも盛られたかと狼狽するセンラ。
食事は基本自分かまふまふの担当である。
今晩は自分が作った。
無論毒など盛ってはいない。

「いや、ちょ、落ち着いて。
…その、寝てたら、鼻血が逆流してきて」

シロは慌てて立ち上がった。
気管に入って死ぬかと思いましたよ、
と微笑むシロ。
少し心配してくれたのは嬉しいようで。

対してセンラは糸が切れたように座り込んだ。

「……紛らわしい……!」

口元を赤く染め、手のひらも真っ赤ときた。
鼻血と言われればそういえば今日出してたね!
と言う話だが、こう咄嗟に、
何も知らずに見ると喀血を疑ってしまう。

「ふふ、心配してくれたんですか?」

シロはちょっと楽しそうに笑った。
その顔にあんなに邪険にしてきたのに。
なんて悪意はないが、変貌っぷりが楽しいようだ。

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煮凝り - れもんさん» あ゛っ…!読み返してまで…ありがとうございます更新頑張りますね!! (2020年9月11日 22時) (レス) id: 070d398b9c (このIDを非表示/違反報告)
れもん(プロフ) - 煮凝りさん» 全然いいなのです〜!!今日また見返してほっこりしてますw!! (2020年9月11日 19時) (レス) id: e9c3d8ad5a (このIDを非表示/違反報告)
煮凝り - れもんさん» 返信遅くなってすみません…!ほっこりしていただけたなら嬉しい限りです!! (2020年9月10日 17時) (レス) id: 070d398b9c (このIDを非表示/違反報告)
れもん(プロフ) - やああああ、いい仲間〜!!心温まる〜!!! (2020年9月4日 20時) (レス) id: e9c3d8ad5a (このIDを非表示/違反報告)
煮凝り - ささささん» わぁぁ嬉しいです……!!頑張りますね!! (2020年9月3日 19時) (レス) id: d8b345149a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:目に煮凝りができた | 作成日時:2019年12月23日 14時

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