39話 ページ40
「…だからわざと？」
「それ以外に方法が思いつかなかったんだ」
シロの語調はあくまで淡白だった。
レイリは絞り出すようにして言葉を紡ぐ。
「自分の教え子を
爆弾にしてぇなんて誰が思うよ。
能力とかそういうんじゃねぇんだよ、
ただ生きてりゃ残るもんがあると。
そう思って部隊を追い出した」
「……その結果がこれですか」
天月の能力は先程レイリが言ったように
夜襲や奇襲には抜群の起用になるだろう。
きちんと内容を把握した人間が人事を取れば。
レイリの選択の結果が、
今天月が鋭角に居るという答えだ。
…鋭角に居ることを可哀想とするのなら。
「……言い返す言葉もねぇ」
レイリはシロの
少し突き放すような言葉に思い切り頭を下げた。
シロはそのレイリをぼんやりと眺めたあと言う。
「私に謝る必要はどこにもないんですよ。
私はただただ首を突っ込んでいるだけです」
だからといって天月に謝れば済む話でもないが。
シロは思う。
トラウマは、
克服するのは本人の気持ち次第なのだ。要は。
その気持ちに繋がるのが、
レイリが謝罪することなのか
レイリに勝つことなのか
レイリを殺すことなのか死ぬ事なのか、
そんなものは結果が出ないと分からない。
もう克服出来ない可能性もゼロじゃないし、
まず天月が
レイリと面と向かって話せるかも怪しいところだ。
「……天月に会わせてくれねぇか」
「……彼が耐えられるとは思えません」
シロは先日の
天月の取り乱し様を思い出して言った。
名前が出ただけであんなに怯えるのに、
対面したらどうなってしまうのか。
でもこのままでいいなんて思えないのだ。
レイリの取った方法は褒められたものでは無い。
それは、ただ部隊を追えば全て丸く収まる
と思っていたレイリの詰めの甘さでもあり、
きちんと理由を言葉にしなかった
至らなさでもあり、
事実を知らない本部の怠慢のせいでもある。
しかし天月は何も関係ないのだ。
人は能力を選べないのだから。
「れいさん。
あなたの取った方法は、結果として誤りです。
その事実は変わりません。
でも天月さんは、鋭角で楽しそうです。
自分の能力に引け目を感じることなく、
昼夜問わず自分に出来ることを精一杯やりきる。
天月さんはそういう人です。」
平素は部隊長兼参謀のまふまふの手伝いを。
夜襲や夜討ちには進んで参加すると言ったように。
「彼らとなら、
彼は乗り越えられるのかも知れません」
シロはレイリの瞳を真っ向から見すえて言った。
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煮凝り - れもんさん» あ゛っ…！読み返してまで…ありがとうございます更新頑張りますね！！ (2020年9月11日 22時) (
レス) id: 070d398b9c (このIDを非表示/違反報告)
れもん(プロフ) - 煮凝りさん» 全然いいなのです〜！！今日また見返してほっこりしてますw！！ (2020年9月11日 19時) (レス) id: e9c3d8ad5a (このIDを非表示/違反報告)
煮凝り - れもんさん» 返信遅くなってすみません…！ほっこりしていただけたなら嬉しい限りです！！ (2020年9月10日 17時) (レス) id: 070d398b9c (このIDを非表示/違反報告)
れもん(プロフ) - やああああ、いい仲間〜！！心温まる〜！！！ (2020年9月4日 20時) (レス) id: e9c3d8ad5a (このIDを非表示/違反報告)
煮凝り - ささささん» わぁぁ嬉しいです……！！頑張りますね！！ (2020年9月3日 19時) (レス) id: d8b345149a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：目に煮凝りができた | 作成日時：2019年12月23日 14時
