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37話 ページ38

「おはようございます、れいさん」

昨晩安曇に頼んで予約をねじ込んだ、
少しいいホテルのロビー。
右掌にカードキーを握ってシロは笑う。

「……あぁ、おはよう」

レイリは浮かない顔でそう答えた。
チラチラと視線が辺りに飛んでいる。
シロはそれを見ながら
平常のトーンを崩さずに言う。

「天月さんは来てませんよ。
来れるとも思えませんけど。
それから部隊のみんなも来てません。
私とあなたと2人。」

408号室だそうです。
シロはそう言って先導するように歩き始めた。
レイリは黙ってそれに続く。
シロの声音に批判も軽蔑もないのは
まだ事の真相が分かっていないからであるが、
これから真実を話す
と思うと喉が張り付くようだった。

「どうぞ」

シロはキーを通して扉を開く。
そのまま先に部屋に入る。
軍隊仕込みの、
もし敵が潜んでいたら
先に攻撃されてもいいように、
下の位の人間が入る。
シロの精一杯の信用。
レイリはそれを見て僅かに目を見開いて、
観念したように微笑んだ。

「天月の事だな」

扉が閉まると同時にレイリは自分から口を開く。
シロはそのセリフに少し優しい表情を見せて、
はい、と返す。

「あいつは元教え子なんだ。
まぁ、お前のことだから察しは付いてるだろう。
俺の教え子で、
俺が唯一全力で虐め抜いた、部下だ」

「はい」

シロは顔色を変えずにそういった。

「天月さんは、
大分トラウマになってるみたいです。
思い返せば、今でも
夜しか役に立たない
というセリフを冗談交じりにでも言う時は
顔が僅かに強ばって手指に力が篭もる。
……あなたは彼に謝るべきですね。
いえ、謝らなくていいんです。
天月さんが向き合えるようになった時に、
彼の思いを全て受け止めるべきです。
てもそれは、
天月さんに向き合ってもらうように仕向けるのは、
全てを知らない私には不可能です。
……教えて頂けますか、レイリさん。
豪放磊落で意図せずとも人の集まる、
あたたかいあなたがそんな結論をとった理由を」

シロはあくまで私は第三者。
その重いだけは曲げるまいとレイリを見据える。
あぁ。レイリも迷わず口を開く。

「天月は…俺が見てきた中でも
強みと弱みがはっきりわかれるやつなんだ」

星々の力を借りる、という
一風変わった能力の彼だが、
夜…つまり星の出る時間帯において
身体能力を始め
その他付与効果からエフェクトめいた効果まで、
全てが底上げされる能力。
しかしその代償は
昼間には戦えないこと。
レイリは苦い顔で呟く。

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煮凝り - れもんさん» あ゛っ…!読み返してまで…ありがとうございます更新頑張りますね!! (2020年9月11日 22時) (レス) id: 070d398b9c (このIDを非表示/違反報告)
れもん(プロフ) - 煮凝りさん» 全然いいなのです〜!!今日また見返してほっこりしてますw!! (2020年9月11日 19時) (レス) id: e9c3d8ad5a (このIDを非表示/違反報告)
煮凝り - れもんさん» 返信遅くなってすみません…!ほっこりしていただけたなら嬉しい限りです!! (2020年9月10日 17時) (レス) id: 070d398b9c (このIDを非表示/違反報告)
れもん(プロフ) - やああああ、いい仲間〜!!心温まる〜!!! (2020年9月4日 20時) (レス) id: e9c3d8ad5a (このIDを非表示/違反報告)
煮凝り - ささささん» わぁぁ嬉しいです……!!頑張りますね!! (2020年9月3日 19時) (レス) id: d8b345149a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:目に煮凝りができた | 作成日時:2019年12月23日 14時

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