36話 ページ37
「センラ?入るぞ」
うらたはドアをノックして、
そう声をかける。
「……はい」
気落ちした声が聞こえて、
うらたはそのままドアノブを回した。
「センラ」
「……うらたさん……」
センラはベッドの端に座り、
頭を垂れて項垂れている。
「俺、なんか間違ってましたか?」
「……いや。
間違っては、ない。
俺らにとって人の過去に踏み込まない。
は、この基地内でも
遵守すべき項目のひとつだった。」
顔をあげないセンラに、
うらたは極めてゆっくりと言葉を返した。
「…………」
「でも、天月の様子はちょっと尋常じゃない。
踏み込めない、
その一言で片付けるか?
と言われると、俺はなんとも言えない。
……昔、みんなが罰ゲームで
過去のこと話すってなった時
そらるが酷いことなってんの見て
じゃ俺言いますわ、
なんて言ったお前のことだから、
みんなのことを一番に考えてる、
優しいやつだってのは俺はわかってるよ。」
「……でも今天月を助けられるのは、
俺らじゃない。」
うらたは変わらないトーンでそう言った。
「……やっぱこれ、
嫉妬なんですかね?
仲間やと思ってたのに
相手のこと一番に考えてたつもりやのに、
結局助けんのはぽっと出の、
って思ってもうて。」
センラはようやく顔を上げて言った。
「……さぁ」
うらたはそう言って笑ってみせる。
「……いや、
ほんとに踏み込むって
どういうことか分かってんのか、
って言いたかったんは事実なんやけど。
…まーしぃのこともあって、
ちょっとシロちゃんに嫉妬してたんかなぁ〜
俺だっさ……!」
「センラ嫉妬深いやつだもんな」
「うらたさんはどこにも行かないでよ、
俺だけのうらたさんやから」
あはははははははっ!
と楽しげな空気が流れる。
「……でも、今回は天月くんがああなって、
それでシロちゃんが手を貸すってことになった。
……でも、
これからさきあの子がしゃしゃり出て、
おれらのこと救う、
なんてほざくようやったら、
俺は容赦しませんよ」
うらたはその目に秘められた本気の思いを受けて、
「……その時は俺だって黙ってない」
と返した。
「……じゃーな、おやすみ」
「はい……
すんません、わざわざ来てもらって」
「いいから早く寝ろよ、
ちゃんとシロにも謝っとけ」
「……ちょっと躊躇うなぁ。」
「そらると同じじゃねぇか!」
「そらるさんよりかはしゃんとしてる」
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煮凝り - れもんさん» あ゛っ…!読み返してまで…ありがとうございます更新頑張りますね!! (2020年9月11日 22時) (レス) id: 070d398b9c (このIDを非表示/違反報告)
れもん(プロフ) - 煮凝りさん» 全然いいなのです〜!!今日また見返してほっこりしてますw!! (2020年9月11日 19時) (レス) id: e9c3d8ad5a (このIDを非表示/違反報告)
煮凝り - れもんさん» 返信遅くなってすみません…!ほっこりしていただけたなら嬉しい限りです!! (2020年9月10日 17時) (レス) id: 070d398b9c (このIDを非表示/違反報告)
れもん(プロフ) - やああああ、いい仲間〜!!心温まる〜!!! (2020年9月4日 20時) (レス) id: e9c3d8ad5a (このIDを非表示/違反報告)
煮凝り - ささささん» わぁぁ嬉しいです……!!頑張りますね!! (2020年9月3日 19時) (レス) id: d8b345149a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:目に煮凝りができた | 作成日時:2019年12月23日 14時