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え?と、開いた口から間抜けな声が出た。

いくら思考をめぐらせても一向に理解ができなくて、唖然としながら彼を見上げる。


「じゃ、今口答えしたしペナルティな」

「ま、待って、やだよ……!だって私……」


ファーストキスなのに、と小さく呟くように声に出すと、彼は驚いたような顔をしつつも微笑んで逆に好都合だのなんだのと訳の分からない事を言った。

この人、頭おかしい。

おかしいとかいう領域じゃない。常識人を気取った、ただのサディストだ。人が嫌がることをして楽しんで笑って、何が一体なにが面白いの。


「さっき言うたやろ?逆らう毎に、ペナルティ追加って」

「まっ、待ってセンラくん!本当にやだってば……!」

「拒否権ない言うとるやろ、あほ」


後ずさりしながら振り払おうとした手を逆に掴まれ、フェンスに押し付けられるようにして、身体を固定される。

ガシャン!とフェンス同士が擦れる音がして、反抗する間もなく唇に柔らかいものが触れる感覚があった。目の前にはドアップで映った嫌味なほど綺麗なセンラくんの顔。切れ長の睫毛とか、目の下にある小さなほくろとか、鮮明に見えてしまった。

私のファーストキスを無惨にも奪っていった唇はすぐに離れていったが、彼は顔の距離だけは近いままに留めて更に恐ろしいことを言った。


「なーに、もう終わったと思った?今口答えしてた分、まだ終わってへんよ」

「え、っも、やだ……っん、」


再び唇に触れた熱に、私は動揺と消失感に苛まれて目から涙をぽろぽろと零した。

なんで、酷い……


「ひ、ぅぐ……っ」

「もー、泣かんでや。飯が不味くなるやろ?」

「なんで……なんで、こんな酷いことするの……っ」

「それは……なんでなんやろね。自分で考えて」


彼は冷たくそう言うと、遠い目をしながら朝は曇っていたというのに今はすっかり晴れている空を見上げた。眩しい晴天が今の私には毒のようだった。もうこれ以上の醜態は晒したくなくて涙が溢れてしまわないように上を向くが、それでも涙は止まらない。

まるで堰を切ったように、溢れて止まらない。

袖で拭っても次から次へと溢れてくる涙はキリがなくて、気づけば袖は涙でびちょびちょになっていた。それでも止まらない。悔しさと情けなさで、もう全て放って逃げ出してしまいたくなった。

そんな勇気ですら持ち合わせていないくせに。


「(……ファーストキスくらいは、好きな人にあげたかったのに……)」


その思いも、今は遠くの星へと消えていってしまった。

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白雨(プロフ) - mさん» ごめんなさい気づかなくて返信遅れました(汗) 以前からの読者でしたか……!いつもお世話になっております◎ ありがとうございます〜!今度は最後まできっちり完結させるつもりですので、更新はゆっくりかと思いますがお付き合いいただけると嬉しいです(*´˘`*) (2月12日 0時) (レス) id: 2d25cdcdc2 (このIDを非表示/違反報告)
m(プロフ) - コメント失礼します。以前からこの作品が好きで何度も読み返していたので再掲してくれて本当に嬉しいです!ありがとうございます。無理のないペースで頑張ってください。更新楽しみに待ってます🫶🏻 (1月11日 2時) (レス) id: ae0456fc9b (このIDを非表示/違反報告)
李 雨月(プロフ) - 貴月さん» 以前の読者さまがいらっしゃったとは、びっくりしました……!その言葉を聞くことが出来て、また書き始めてよかったなと思えました。今度こそ必ず完結させます。また見つけてくださって本当にありがとうございました! (6月23日 21時) (レス) id: 2d25cdcdc2 (このIDを非表示/違反報告)
貴月(プロフ) - コメント失礼します。以前からすごく大好きな作品だったので、またこの作品を読むことが出来て本当に嬉しいです!更新楽しみにしています…! (6月21日 16時) (レス) id: 76caf5b15a (このIDを非表示/違反報告)
李 雨月(プロフ) - yumeさん» コメントありがとうございます。そう言っていただけてとても嬉しいです!後々、セさんの行動の意味や心情も分かるようになってきますので是非今後ともお付き合いください◎ (6月21日 11時) (レス) id: 8fe15b8549 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:白雨 | 作者ホームページ:疑心暗鬼の中で芽生える執愛。  
作成日時:2023年6月8日 21時

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