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春風というのは爽やかで心地のいい風ではあるが、肌を撫でられればほんの少し肌寒さを感じる風だ。

5時間目の授業中、開いた窓から教室内へと遠慮もなしに入ってくる春の風に、私は僅かながらも肌寒さを感じていた。でも今は授業中だし、立ち上がる訳にもいかない。

多分、先生に寒いので窓を閉めていいかと聞けばいいのだろうけど今日はこれ以上目立ちたくないし……どうしよう。

チラチラと窓を見ながらも何も出来なくて、どうしようかとおろおろと考えては寒さに腕を摩り、どうしても落ち着かなくて目立たない程度に何度も椅子に座り直していると、突然真横で「せんせー」と言って誰かが立ち上がった。

声の聞こえた方向に視線を向けると、そこには軽く手を挙げた坂田くんがいて、私は思わず驚きを声に出してしまいそうになった。


「どうしたの、坂田くん」

「寒いから窓閉めていいですか!」

「ええ、どうぞ」


先生との軽い会話で私がしてほしかった事を全てやってくれた坂田くんは、黒板から振り返った先生に了承の返事を貰うと立ち上がって全開になっていた窓を閉めた。

窓を閉める。たったそれだけの事なのに、風の通りがなくなった教室の中で冷たくなっていた足と頬が、肌の表面からじんわりと温かくなったような気がした。

もしかして私が寒いと思っていた事に気づいたのだろうか、なんて思いながら窓を閉めてすぐに席に着いた彼を盗み見ると、ぱちっと目が合って、そして柔らかく微笑まれる。


「……あ、坂田くん、窓閉めてくれてありがとう」

「んーん、それより気づくの遅くなってごめん。さむかったやろ」

「だ、大丈夫……ほんとに、ありがとう」


無心だった私は何もかもを忘れて、以前から彼に抱いていた依存に似た恋心のようなものを再び感じた。

ドクンと大袈裟な音をたてて高なった胸と、恥ずかしさのあまり少しだけ熱くなった顔が私に『恋』というものを自覚させているようだとも思った。

やっぱり私はこうやって綺麗に笑っている坂田くんが好きなのかもしれない。そう思うと自然に緩んだ頬。それを誰にもバレないように手で覆って隠すけれど上手く隠せていた自信はない。


「(……恥ずかしくて体まで温まっちゃった……)」


そう思いながら頬だけでなく顔全体を手で覆った私は、しばらくの間授業すら忘れて彼から向けられた笑顔を脳内で思い巡らせていた。

舞い上がった頭では、反対側から向けられている嫉妬の混ざった視線に気付くことはなかった。









「(……坂田のことばっか見てんなや、ばか)」

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白雨(プロフ) - mさん» ごめんなさい気づかなくて返信遅れました(汗) 以前からの読者でしたか……!いつもお世話になっております◎ ありがとうございます〜!今度は最後まできっちり完結させるつもりですので、更新はゆっくりかと思いますがお付き合いいただけると嬉しいです(*´˘`*) (2月12日 0時) (レス) id: 2d25cdcdc2 (このIDを非表示/違反報告)
m(プロフ) - コメント失礼します。以前からこの作品が好きで何度も読み返していたので再掲してくれて本当に嬉しいです!ありがとうございます。無理のないペースで頑張ってください。更新楽しみに待ってます🫶🏻 (1月11日 2時) (レス) id: ae0456fc9b (このIDを非表示/違反報告)
李 雨月(プロフ) - 貴月さん» 以前の読者さまがいらっしゃったとは、びっくりしました……!その言葉を聞くことが出来て、また書き始めてよかったなと思えました。今度こそ必ず完結させます。また見つけてくださって本当にありがとうございました! (6月23日 21時) (レス) id: 2d25cdcdc2 (このIDを非表示/違反報告)
貴月(プロフ) - コメント失礼します。以前からすごく大好きな作品だったので、またこの作品を読むことが出来て本当に嬉しいです!更新楽しみにしています…! (6月21日 16時) (レス) id: 76caf5b15a (このIDを非表示/違反報告)
李 雨月(プロフ) - yumeさん» コメントありがとうございます。そう言っていただけてとても嬉しいです!後々、セさんの行動の意味や心情も分かるようになってきますので是非今後ともお付き合いください◎ (6月21日 11時) (レス) id: 8fe15b8549 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:白雨 | 作者ホームページ:疑心暗鬼の中で芽生える執愛。  
作成日時:2023年6月8日 21時

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