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だらだらと流れ出した冷や汗が留まることを知らず焦りだけが増幅する中でも、周りがそれを感じ取ってくれる事はない。
延々と無数の視線が、奇妙なものを見るような少し棘のある視線が自分に注がれているのを感じる。
自分に向いている大量の視線に怖くなって体を震わせながら俯いていると、そんな私をこの状況から助けるように意識を引かれるような元気な声が突然教室に響いた。
まるで今まで状況を見ていてそろそろ危ないからと声を上げたようなタイミングだったが、私は自分から視線が逸れた事に安堵を抱いてしまって、その時はそこまでの考えには至らず胸に手を当てなくても聞こえてくる自分の心音に耳を傾けることしかできなかった。
「えっ、なんか今日めっちゃ静かやん!」
「おー、坂田やん。おはよ」
「センラ今日は早いんやなぁ。珍しいやん、どうした?」
声の主は坂田くんだったようで、クラスメイト達は次々に彼に話しかけに行く。
その中心にいる彼はいつものように花が咲いたような笑顔で笑って何も知らないとでも言うかのような表情でセンラくんと会話しているが、センラくんからは笑顔に紛れた威圧が感じられた。
そ、そうか、あの謎の宣戦布告してきた坂田くんのこと、センラくんは気にしてるのか……!!
それを察して胃が痛くなってきたような気がしたが、今は2人とも表面上仲良くしているつもりのようなので特に気にしないでおくことにした。
場の空気が変わったように注目が私から逸れて坂田くんとセンラくんへ移った事に安堵の息を吐きつつ、私は未だに私の席周辺から離れようとしない藍原さんをチラリと盗み見る。見あげればそこには可愛らしいにこにこ笑顔の藍原さんがいて、目が合えば更ににこりと微笑まれた。
その微笑みに対し女神ってこういう人のことを言うんだな、なんてのんびり考えていると、坂田くんのお陰で空気が変わり、いつも通りのわらわらとした活気が溢れてきた教室内に丁度よく先生が入ってきた。
気づけばこんなに時間が経っていたようだ。
感情が昂っている間や緊張している間は時間という概念が頭から取り除かれるのだろうか。分からないけど体感が殆どなかった。
教室に入ってきた先生を見て壁掛けの時計を確認したらしい藍原さんは残念そうにしながらも、私に軽く手を振ってニコニコしながら自身の席に戻っていった。
「おらもう時間だぞ席つけー」
や、やっと心を落ち着けられる……。
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白雨(プロフ) - mさん» ごめんなさい気づかなくて返信遅れました(汗) 以前からの読者でしたか……!いつもお世話になっております◎ ありがとうございます〜!今度は最後まできっちり完結させるつもりですので、更新はゆっくりかと思いますがお付き合いいただけると嬉しいです(*´˘`*) (2月12日 0時) (レス) id: 2d25cdcdc2 (このIDを非表示/違反報告)
m(プロフ) - コメント失礼します。以前からこの作品が好きで何度も読み返していたので再掲してくれて本当に嬉しいです!ありがとうございます。無理のないペースで頑張ってください。更新楽しみに待ってます🫶🏻 (1月11日 2時) (レス) id: ae0456fc9b (このIDを非表示/違反報告)
李 雨月(プロフ) - 貴月さん» 以前の読者さまがいらっしゃったとは、びっくりしました……!その言葉を聞くことが出来て、また書き始めてよかったなと思えました。今度こそ必ず完結させます。また見つけてくださって本当にありがとうございました! (6月23日 21時) (レス) id: 2d25cdcdc2 (このIDを非表示/違反報告)
貴月(プロフ) - コメント失礼します。以前からすごく大好きな作品だったので、またこの作品を読むことが出来て本当に嬉しいです!更新楽しみにしています…! (6月21日 16時) (レス) id: 76caf5b15a (このIDを非表示/違反報告)
李 雨月(プロフ) - yumeさん» コメントありがとうございます。そう言っていただけてとても嬉しいです!後々、セさんの行動の意味や心情も分かるようになってきますので是非今後ともお付き合いください◎ (6月21日 11時) (レス) id: 8fe15b8549 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:白雨 | 作者ホームページ:疑心暗鬼の中で芽生える執愛。
作成日時:2023年6月8日 21時