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「っ、いた”……っ」
センラくんの顔が僅かな吐息と一緒に離れて、ヒリヒリとした痛みだけがそこに残る。
余韻を残しながら肌を這う痛みに、思わず顔を歪めた。
「んー、思ったより噛み跡強くついちゃった。まぁええか」
「なんで、こんな事するの……」
「んー?なんでやろなー?」
そう言って、彼は高校生にしてはあまりに色気がありすぎる艶やかな笑みを浮かべた。
分からない。センラくんが何を考えているのか、何をしたいのか。彼の思考が、全く分からない。
しかし未だに頭の整理ができなくてその場で硬直している私を気にすることなく、彼は先程開けたシャツのボタンをキッチリ上まで締めると、また朝のように腕を後ろに回して私の頭を撫でた。
何故かは分からないけど、後頭部を優しく撫でるその大きな手を不快だとは思わなかった。不思議と、手を払いたいとは思わなかったのだ。
「俺には逆らわんこと!物分りがいいAなら分かるよな?」
「わ、わかった……」
「ん、それでええんよ。坂田も大人しい子が好きやしね。でも、今は俺の言うことだけ聞いとって?」
坂田くんは、大人しい子が好きなの……?
センラくんの言葉を聞いて、私は今日初めて彼と目を合わせた。カラコンも入れていないのに少し黄色がかっている彼の瞳は、今は澄んだ金糸雀色をしていた。
そしてその中にある甘く、とろんとした蜂蜜のような色に、私は釘付けになる。
「……A?」
「私、坂田くんに振り向いてもらえるかな」
「……どうやろな。でも、まずは自然に話せるような仲にならなあかんやろ」
「自然に、話せる……でも私、まだ1回も坂田くんと話した事ない……」
「え、そうなん?……Aってもしかして面食い?」
「ち、違うから!ただ、その……いつも雰囲気を明るくしてくれる所とか、たまに見せるかっこいい所とか、憧れちゃったんだもん」
照れ隠しに俯いて顔を隠す。
彼の周りはいつだって輝いていた。その周りにいる1人であるセンラくんとこんな変な関係になるとは思ってもみなかったけど、やっぱり彼の周囲の人間は私と違って眩しいなと思った。
センラくんも、本当は私にかまってくる意味がわからないくらい素敵な人だ。
脅迫してきたり笑顔で威圧してきたり、私からしたら怖いイメージが強いけれど、クラスの委員長としての彼は努力家だから。
去年の文化祭で、それはよく分かった。
「(まぁこんな腹黒い人だとは思わなかったけど……」
その休み時間は、予鈴ギリギリまで頭を撫でられ続けた。
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白雨(プロフ) - mさん» ごめんなさい気づかなくて返信遅れました(汗) 以前からの読者でしたか……!いつもお世話になっております◎ ありがとうございます〜!今度は最後まできっちり完結させるつもりですので、更新はゆっくりかと思いますがお付き合いいただけると嬉しいです(*´˘`*) (2月12日 0時) (レス) id: 2d25cdcdc2 (このIDを非表示/違反報告)
m(プロフ) - コメント失礼します。以前からこの作品が好きで何度も読み返していたので再掲してくれて本当に嬉しいです!ありがとうございます。無理のないペースで頑張ってください。更新楽しみに待ってます🫶🏻 (1月11日 2時) (レス) id: ae0456fc9b (このIDを非表示/違反報告)
李 雨月(プロフ) - 貴月さん» 以前の読者さまがいらっしゃったとは、びっくりしました……!その言葉を聞くことが出来て、また書き始めてよかったなと思えました。今度こそ必ず完結させます。また見つけてくださって本当にありがとうございました! (6月23日 21時) (レス) id: 2d25cdcdc2 (このIDを非表示/違反報告)
貴月(プロフ) - コメント失礼します。以前からすごく大好きな作品だったので、またこの作品を読むことが出来て本当に嬉しいです!更新楽しみにしています…! (6月21日 16時) (レス) id: 76caf5b15a (このIDを非表示/違反報告)
李 雨月(プロフ) - yumeさん» コメントありがとうございます。そう言っていただけてとても嬉しいです!後々、セさんの行動の意味や心情も分かるようになってきますので是非今後ともお付き合いください◎ (6月21日 11時) (レス) id: 8fe15b8549 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:白雨 | 作者ホームページ:疑心暗鬼の中で芽生える執愛。
作成日時:2023年6月8日 21時