【skt】好きじゃないのに。【snr】

11.取り繕ってる。 ページ39

今日は随分と気分が良かった。

お父さんのことがあったからかもしれないけれど、朝ふと見た占いが1位だったり運良く今日提出の課題がやってあったりしたから今日はいい日なんだなって、呑気にそんな事を思っていたのだ。

教室に行きたくないとは思うけれど、今日なら上手くやれる気がする。そんな風にすら思えていた。

以前のように怠さや吐き気が登ってこないことに安心しつつ、いつも通りの通学路を歩いていく。雲一つない真っ青な空が、久しぶりに綺麗だと思えた。

剥がれかけたアスファルトの上を軽くジャンプして通り越え、上機嫌のまま校門をくぐると自分の学年の校舎まであと少し。スマホの画面を見れば、時間にはまだ余裕があった。早く教室に行き過ぎてもやる事がないから暇だし、教室行く前に保健室に寄ってこの前のお礼言ってこようかな。

そう思った私は昇降口で革靴から学校で指定されているシューズに履き替えて、教室とは反対の方向に歩き出した。うちの学校の保健室は体育館に近い1階の1番端にあるのだ。その為体育館とは別方向にある教室からは少し遠い。

……そういえば、坂田くんは意識がない私を抱えて、ここまで連れて行ってくれたんだっけ。

私は痩せすぎでも太り過ぎでもない微妙な体質だが、身長が平均よりやや高めなので絶対に重いと思われただろうな……いや、もう今となっては何を思い出しても無駄だが。

しかし、私も女なのでただただ異性に抱きかかえられていたという事実が恥ずかしいのだ。先生相手なら異性相手でも妙な思いを抱かなかったかもしれないが、最近猛アタックされてる……って言うか、半分脅されてる坂田くんが相手だったから尚更気になる。

大人しくて日陰にいるような典型的なタイプをしている私で遊びたいだけなら、あんな目立つようなことしなくてもいいのに。

坂田くんの思考は、よく分からない。

急に脅してきたり、自分とも付き合って欲しいとか言ってきたり、無理やりキスしてきたり、勝手にキスマークつけたり、何がしたいのか本当に分からない。

複雑だ。

複雑だけど、抱えた下心の中には嬉しいという感情が混じっている。


「……失礼します」


今日はちゃんと開いていた保健室。

ドアをノックして声を掛けながら中へ入れば、デスクのパソコンと睨み合っている眼鏡姿の先生の姿があった。静かな部屋の中に、タイピングする音が響いている。

私がドアを閉める音で室内に入ってきた生徒の存在に気づいたらしい彼女は、眼鏡を外して振り返ると微笑んだ。


「あら、佐伯さんじゃない」

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