・ ページ37
家に帰り、藍原さんに貰ったピンク色のリップを眺める。
眺めるというか、もうほぼ睨みつけているような気がしないでもないけれど。
「いやでも、せっかく貰ったわけ、だし?……た、試す、だけなら……」
言い訳するようにごにょごにょと言葉を呟きながら、私はゆっくりと机の上に乗ったリップのパッケージに手を伸ばした。
可愛らしいオシャレなピンク色のパッケージから円柱状になっているリップを取り出して、色を確認するためにキャップを開ける。すると、桃のような甘い香りがした。
どぎつい感じじゃないから私でも付けられそうだけど、でもいつもより血色がよく見えそうだし不自然になってしまわないだろうか。でも桜色って書いてあるし、ほんのり淡い桃色が唇に乗る感じかな。
この歳になっても口紅ですら塗ったことがないから全く分からないのだけれど。
とりあえず物は試しだと思って決心した私は鏡を持ってきて、唇に軽く乗せるようにして塗ってみた。すると、色の悪かった唇がほんのりと桃色に色付き、普段よりも潤いがあるように見えた。広告で見る女優さんの唇と一緒だ。
「わ、すご……」
アウトドア派ではない上にほぼと言っていいくらい外に出ないので引きこもりらしく私は肌が白いのだが、こういう桃色系統は白い肌に映えるのだろうか。いや私の顔のタイプ的な問題かもしれない。
一気に女の子になった気分だけれど、そもそもこれをつけていく場所がないので困ったものだとも思った。
今年は結婚式にお呼ばれもしてないし、学園祭なんかもかなり先で……あれ、これどこで使うの。
「(……でもまぁ、いっか)」
持ってるだけでかわいい女の子になった気分だった。
リップって凄いな。
素直にそう考える事にした私は、とりあえずそれをペンケースに入れてそこで大事に保管することにした。警戒してしまったけど、藍原さんいい人だったな。誤解しててごめんなさい、と心の中で彼女に謝っておいた。
そして、連絡先など知らないので今度学校で会った時にまたお礼を言おうと決めた私は、次にお昼をどうしようかという悩みがでてきた為に上機嫌でキッチンの方へ向かった。
お腹すいたな。
374人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
白雨(プロフ) - mさん» ごめんなさい気づかなくて返信遅れました(汗) 以前からの読者でしたか……!いつもお世話になっております◎ ありがとうございます〜!今度は最後まできっちり完結させるつもりですので、更新はゆっくりかと思いますがお付き合いいただけると嬉しいです(*´˘`*) (2月12日 0時) (レス) id: 2d25cdcdc2 (このIDを非表示/違反報告)
m(プロフ) - コメント失礼します。以前からこの作品が好きで何度も読み返していたので再掲してくれて本当に嬉しいです!ありがとうございます。無理のないペースで頑張ってください。更新楽しみに待ってます🫶🏻 (1月11日 2時) (レス) id: ae0456fc9b (このIDを非表示/違反報告)
李 雨月(プロフ) - 貴月さん» 以前の読者さまがいらっしゃったとは、びっくりしました……!その言葉を聞くことが出来て、また書き始めてよかったなと思えました。今度こそ必ず完結させます。また見つけてくださって本当にありがとうございました! (6月23日 21時) (レス) id: 2d25cdcdc2 (このIDを非表示/違反報告)
貴月(プロフ) - コメント失礼します。以前からすごく大好きな作品だったので、またこの作品を読むことが出来て本当に嬉しいです!更新楽しみにしています…! (6月21日 16時) (レス) id: 76caf5b15a (このIDを非表示/違反報告)
李 雨月(プロフ) - yumeさん» コメントありがとうございます。そう言っていただけてとても嬉しいです!後々、セさんの行動の意味や心情も分かるようになってきますので是非今後ともお付き合いください◎ (6月21日 11時) (レス) id: 8fe15b8549 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:白雨 | 作者ホームページ:疑心暗鬼の中で芽生える執愛。
作成日時:2023年6月8日 21時